★ここが重要!

★要点
2026年9月8日、日本科学未来館で旭硝子財団が「環境危機時計®」の2026年の時刻を発表した。世界平均は9時39分。前年から6分進み、2年連続で針が進んだ。「極めて不安」とされる9時台の、さらに奥へ入り込んでいる。ただし世界地図を見ると、景色は一つではない。アフリカは52分、東欧・旧ソ連は27分と大きく針が進み、西欧、北米、オセアニアは針が戻った——それでもなお10時台。日本は9分戻って9時30分だった。同時に発表された国内の生活者調査では、一般の人々の時計は7時3分。有識者との差は、およそ2時間半。会場で浮かび上がったのは、危機の深刻さそのものよりも、危機感の分布のいびつさだった。
★背景
この調査は1992年、リオの地球サミットの年に始まった。今年で35回目。世界の環境有識者に「人類の存続はどれほど危機的か」を問い、その答えを0時から12時までの時刻に置き換える。9時1分から12時が「極めて不安」の領域だ。気温やCO₂濃度を換算した数値ではない。地球環境の状態を、専門家がどう捉えているかという認識そのものを可視化する仕組みである。今年は210カ国の約45,000名に調査票を送り、123カ国1,464名から回答を得た。自由記述で目立ったのは、戦争と紛争の長期化が国際協力を停滞させ、各国が環境より軍事・安全保障を優先せざるを得なくなっているという指摘だった。針を進めているのは、気候そのものだけではない。

直径6メートルの球体に、地球が浮かんでいた。
日本科学未来館のシンボル展示「ジオコスモス」。1000万画素のLEDが、雲の流れる青い惑星を映し出している。実際の地球の200万分の1のサイズだ。
その球面に、時計の針が現れた。
9時39分。
2026年の環境危機時計である。前年から6分進み、2年連続の前進。針は、あと21分で10時に触れる。
2026年9月8日、公益財団法人旭硝子財団は第35回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の結果を発表した。基調講演には宇宙飛行士で同館名誉館長の毛利衛さん。対談には気候学者の江守正多さんと、登山家でタレントの野口絵子さん。
会場で語られたのは、「あと何分で終わりか」ではなかった。
この数字を知ったうえで、私たちは何をするのか。
その一点である。

針は進んだ。だが、世界地図には二つの動きがあった

世界平均は9時39分。数字だけを見れば、じわじわと悪化しているように見える。
だが、地域別の地図を見ると、話は単純ではない。
針が進んだのは、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連、アジア、メキシコ・中米・カリブ諸国、南米。特にアフリカは52分、東欧・旧ソ連は27分、メキシコ・中米・カリブ諸国は20分と、大きく動いた。東欧・旧ソ連は10時06分となり、初めて10時台に入った。
一方、西欧、北米、オセアニアは17〜25分も針が戻っている。
ただし——戻ってなお、西欧10時10分、北米10時09分、オセアニア10時01分。いずれも10時台のままだ。
つまり、危機感がもっとも高い地域の針が少し戻り、これまで比較的低かった地域の針が急速に進んだ。世界の危機感が、上の方で揃い始めている。
日本は9分戻って9時30分。世界平均より、わずかに手前にいる。
なお財団は、本年は調査実施体制を見直すなかで、中国および台湾について従来と同様の調査を実施していないとしている。数字を読むうえで、押さえておくべき前提だ。
自由記述には、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢をはじめとする軍事的緊張への言及が多く寄せられた。戦争や紛争の長期化が環境保全に向けた国際協力や政策対応を停滞させ、各国が環境対策よりも軍事・安全保障を優先せざるを得ない状況を招いている——そうした声である。
気候変動、生物多様性の喪失、資源問題は互いに絡み合っており、個別に取り組むことは難しい。そんな指摘もあった。
針を進めているのは、地球の側だけではない。人間社会の側でもある。

最多は「気候変動」。だが、針がもっとも進んでいたのは「生物多様性」

回答者は、時刻を決めるにあたって念頭に置いた項目を、9つの選択肢から3つまで選ぶ。
最多は「気候変動」で33%。次いで「生物圏保全性(生物多様性)」16%、「社会、経済と環境、政策、施策」13%。この上位3項目の順位は、9年連続で変わっていない。
だが、面白いのはここからだ。
項目ごとの時刻を並べると、順位が入れ替わる。
「生物圏保全性(生物多様性)」9時52分。「気候変動」9時45分。「社会、経済と環境、政策、施策」9時42分。いずれも世界平均の9時39分より進んでいる。
つまり、多くの人が気候変動を挙げるが、それを挙げた人たちの危機感より、生物多様性を挙げた人たちの危機感のほうが強い。
声の大きさと、切迫度は一致しない。
記者からの質問に対し、財団の杉本直樹専務理事は、土地利用の変化や森林の伐採、水質の悪化といった要素が絡み合い、生物多様性という項目に強い問題意識が集まっているとの見方を示した。
炭素は測れる。だから語りやすい。
自然は測りにくい。だから語られにくい。にもかかわらず、専門家の針はそちらでより進んでいる。
測りにくいものが、いちばん危ない。この構図は、覚えておいたほうがいい。


公益財団法人旭硝子財団 杉本直樹専務理事

「進んでいない」という評価が、そろって下がった

もう一つ、見過ごせない数字がある。
調査では、脱炭素社会への転換と、野生生物の生息地の保全・再生について、①一般の人々の意識、②政策・法制度、③社会基盤(資金・人材・技術・設備)の3つの観点から進捗の認識を尋ねている。「確実に進んでいる」を+2、「全く進んでいない」を−2として数値化したものだ。
脱炭素社会への転換は、3つの観点すべてで2026年に評価が低下した。しかも「政策・法制度」や「社会基盤」は、「一般の人々の意識」ほど進んでいないという認識に変化がない。
気持ちだけが先に進み、制度と金が追いついていない。
野生生物の生息地の保全・再生は、さらに厳しい。世界全体で、一般の人々の意識は0.50から0.28へ、政策・法制度は0.43から0.19へ、そして社会基盤は0.17から0.00へ。
ゼロ。つまり「どちらともいえない」の位置まで落ちた。
自然再生に、資金も人材も技術も設備も、届いていないと見られている。
ネイチャーポジティブが国際会議のテーマになり、企業の開示項目になり始めた一方で、現場の実感はここにある。
理念と実装の距離は、まだ遠い。

宇宙飛行士の時計は「11時34分」だった

基調講演に立った毛利衛さんは、1992年、リオの地球サミットの直後に最初の宇宙飛行を経験している。環境危機時計が生まれた年と同じだ。
「地球儀とは違って、本物の地球では国境が見えない」
最初の飛行で気づいたのは、その一点だったという。
講演では、夜側の地球の映像が映された。暗黒のはずの陸地に、人間がつくり出した光の塊が無数に輝いている。都市が明るく光り、鉄道や高速道路に沿って線となり、大陸全体に広がっていく。
1992年、世界人口は55億人。2000年の2度目の飛行時には61億人。そして現在は83億人を超えた。
毛利さんは、ジオコスモスのスケールを使って空気の薄さを説明した。直径6メートル、地球の200万分の1のこの球体では、大気の厚さはわずか2センチほどしかない。そして同じ縮尺の人間は、1ミクロン。体内の細菌やウイルスと同じサイズだ。
ウイルスは、人間の体を発熱させ、命を奪うことがある。
では、地球にとっての1ミクロンは、何をしているのか。
月面開発や火星探査についても、明快だった。地球が住めなくなったときに脱出するためではない、と。月や火星と地球を比較研究し、環境変化を謙虚に学び、地球環境を壊さないよう未然に対処するためだ、と語った。
そして講演の最後に、こうも述べている。
太陽が当たる側の半球では、森林の伐採や砂漠化、都市化が宇宙からもよく見える。だが、まだ汚されていない場所も多い。環境の回復には、まだ間に合う——。
その毛利さんが示した「私の環境危機時計」は、11時34分だった。
根拠は、人口である。
人間らしい生活が可能になったのは、最終氷期が終わっておよそ1万2000年前。気候が安定し、農耕と牧畜が始まった。この1万2000年を12時間に置き換えると、1時間は1000年。もし人間らしい生活があと200年、300年しか続かないなら、針は11時54分あたりになる。
他の要素も考慮して、11時34分。
それでも毛利さんは、こう言い添えた。
決して諦めてはいない、しつこく生きましょう、と。

毛利衛さん
毛利さんが示した「私の環境危機時計」

気候学者と登山家の時計が、1分も違わずに並んだ

続く対談には、東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多さんと、登山家でタレントの野口絵子さんが登壇した。
野口さんは幼少期から父である野口健さんとともに富士山の清掃活動に加わり、中学3年からヒマラヤに通う。氷河湖の拡大を、5年という短いスパンで目の当たりにしてきた世代だ。
2年前、ネパールの村が氷河湖の決壊による洪水で丸ごと流された。氷河が解け、小さな氷河湖がつながって巨大化し、モレーンと呼ばれる岩の堤がある日崩れる。数時間で村が消える。
「父はずっと、いつか決壊すると話していた」
1975年から2000年の融解量と、2000年から2014年の融解量を比べると、後者がおよそ2倍。加速している。ネパールには世界最大級のイムジャ氷河湖があり、こちらも時間の問題だと考えられている。
野口さんはもう一つ、日本の水産資源の話をした。漁獲量はピーク時の3分の1以下。だが活動を続けるなかで実感したことがある。
人間が獲るのを我慢すれば、魚は増える。
自然には、元に戻る力がある。
一方の江守さんは、気候変動を伝える際に必ず心がけていることを語った。危機感と解決策を、常にセットで示すこと。
環境問題の話は、基本的にみんな聞きたくない。近寄れば「あなたは何もしていませんね」と責められそうな気がするからだ。だから絶望させてはいけないし、かといって楽観させすぎてもいけない。そのバランスがいちばん難しい、と。
世界の排出量は、理想的なスピードでは減っていない。だが、途上国が経済成長しエネルギー消費が増えているにもかかわらず、横ばいに近いところまでは来ている。何もしなければ増え続けていたはずの線が、寝てきている。
そして、二人の「私の環境危機時計」が発表された。
野口さん、8時54分。
江守さん、8時54分。
1分も違わなかった。会場がどよめいた。
野口さんがその時刻に込めたのは、「環境問題という言葉がない社会になってほしい」という願いだった。まだ遅くない、と思いたい。自然に回復する力がある以上、これから起こせるアクションがある。守ることが意識せずとも暮らしに組み込まれている状態を、未来としてつくりたい——。
江守さんの8時54分には、別の内訳があった。
「社会経済の部分には、10時をつけた」
書き添えたのは、世界各国が協力して取り組めるかどうかにかかっている、という一文だ。
2015年のパリ協定とSDGs採択から、コロナ禍のころまでは、国際協力がそれなりに機能していた。だがいま、戦争が起き、協定からの離脱が現れ、各国で移民排斥や自国優先を掲げる政治勢力が力を強めている。各国が自国の生き残りで精一杯になれば、気候変動も止まらず、自然も壊れ、食糧危機も起きる。
気候の側の針より、社会の側の針のほうが、進んでいる。
これが、専門家の実感である。

東京大学未来ビジョン研究センター教授 江守正多さん
登山家・タレント 野口絵子さん

生活者は「7時3分」——2時間半のギャップと、世代の逆転

同日、国内の一般生活者を対象とした「第7回 生活者の環境危機意識調査」の結果も発表された。全国の15〜69歳、1,302名。慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授監修による調査だ。
生活者の環境危機時計は、7時3分。「かなり不安」の領域である。
日本の有識者の9時30分とは、約2時間半の開きがある。
世代別に見ると、高校生世代(15〜18歳)7時1分、Z世代(18〜24歳)6時36分、大人世代(25〜69歳)7時27分。危機意識がもっとも高いのは大人世代だった。
危機的だと思う項目の1位は「気候変動」で42.9%。7年連続の1位である。
理由の自由回答が、生々しい。
「何十年に一度といわれたものが、毎年起きている」
「夏が命の危険があるレベルで暑くなったから」
「自分が高齢者になる頃には、夏はもう出かけられないほどの暑さになってしまうかも」
2位は「人口」、3位は「社会、経済と環境、政策、施策」。少子高齢化への不安と、物価高への不安が並ぶ。環境問題は、いつのまにか生活防衛の問題と同じ棚に並べられている。
だが、この調査でもっとも印象的なのは別の数字だ。
「環境問題は、これからの人類の努力によって解決できると思うか」
「解決できる」「ある程度解決できる」と答えた割合は、高校生世代51.2%、大人世代26.6%。およそ1.9倍の差がついた。
逆に「難しい」と答えた割合は、高校生世代41.7%に対し、大人世代61.3%。
解決の枠組みについても割れた。「国連などが中心となって世界全体で話し合い、合意して進める」を選んだのは高校生世代31.3%、Z世代22.9%でいずれも1位。ところが大人世代の1位は、「国同士が協力したり、誰かが主導するのは難しい」だった。
危機感がもっとも高いのは大人世代。
希望をもっとも持っているのは高校生世代。
監修した蟹江教授は、この構図を「大きなギャップ」と表現し、あきらめのような見方が広がることに強い危機感を示している。同時に、若者世代が希望を捨てていないこと自体が希望の光であり、彼らへの負担を減らすために大人が変革を起こす時ではないか、とも記している。
会場で江守さんは、大人世代を代表するかたちで、こう言った。
もう諦めてしまっている人が多い。それはまずい。だが、若い人が「できる」と思っていることは、大人世代にとって希望になる。それを聞けば、諦めている場合ではないとわかるはずだ、と。

【単独インタビュー】江守正多さん「あと5年以内に1.5度を超える」

発表会終了後、江守さんに単独で話を聞いた。
まず、これからの気候変化の見通しについて。
「世界規模でいうと、あと5年以内には世界平均気温が1.5度を超えます。2050年にはこのままの調子でいくと2度に達します」
5年、10年、30年。どのスパンで区切っても、方向は変わらない。猛暑、大雨、食糧危機。それに伴う問題が次々に出てくるのが基本的なイメージだという。江守さんらが制作した動画「2050年の天気予報」は、日本の2050年にあり得る夏の姿を描いたものだ。

このまま行くと日本の夏はどうなる?
「2050年の天気予報 ver.2」
https://www.youtube.com/watch?v=DDF9Sg5DLzc&t=1s

では、企業は何をすべきか。
返ってきたのは、業種によって条件がまったく違う、という整理だった。
「サービス業、金融、流通、小売とかは、使っている電気を再エネに切り替えればもう大体OKみたいな人たちがいる」
一方で、製造業、素材産業、エネルギー産業は違う。脱炭素がビジネスの根幹に関わり、難易度が高い。鉄鋼であれば、高炉を電炉に替え、最終的には水素で還元する。技術そのものを変えなければならない。いま実行しようとすれば、莫大なコストがかかる。
「きついと思います。きついと思うけど、それを諦めないでやってもらう」
そのうえで、江守さんはこう続けた。
「真面目にやったら自分が損しちゃうよ、という部分に関しては、政府にそういう声を上げて、真面目にやってる人が得をするような制度にしてくれ、というふうにしていくのが本筋だろうなと思います」
努力の問題ではなく、制度設計の問題だという指摘である。
一方で、放っておいても進む部分もあると見る。
「世界的に見ると、再生可能エネルギーのほうが、太陽光や風力のほうが化石燃料よりも価格が安定して、設備が早く作れて、もうそっちのほうが増えてきている。電気自動車のほうがガソリンで走らせるより安いといって増えている」
日本ではブレーキがかかっているように見える、とも。つっかえ棒を外せば進むのではないか、という表現だった。
行政の縦割りについても聞いた。環境省、国土交通省、経済産業省、農林水産省。横串が刺さっていないのではないか。
江守さんの見立ては、意外にも冷静だった。GX政策は内閣官房を中心に会議体があり、実態としては経済産業省の比重が大きいものの、政府全体として取り組む仕組みがないわけではない。エネルギーと産業は経産省、地域の脱炭素と国民生活は環境省、建物は国交省と役割分担もできている。全く話ができていないわけではない、と。
ただし、そのGXが良い政策かどうかは見方が分かれる、とも付け加えた。再エネというと中国製の太陽光パネルを買う話になるため後ろ向きになり、ガソリン補助金のような方向に予算が流れる。本気で転換を進めようとしているようには見えない、と。
最後に、気象や地球観測のデータをもっと活用できないかと尋ねた。
「ここにデータがあります、と言われても困っちゃうと思うので」
データそのものではなく、加工してサービスとして提供する。その層がもっと充実すればいい——それが答えだった。
測ることと、使えるようにすること。
自然を測る技術と、社会を動かす創造力。この二つが別の仕事であることは、熊本で開かれたネイチャーポジティブの国際会議でも繰り返し確認されたテーマだった。

時刻を知ることと、時刻を変えること

発表会の総括で、旭硝子財団の島村琢哉理事長は、こんな趣旨のことを述べた。
環境問題が起きても、私たちはそれを他人の問題として扱ってしまう。解決するのは自分ではなく、政府か、誰かだと考えてしまう。それが実態ではないか、と。
環境危機時計は、危機感を煽るための装置ではない。財団は繰り返しそう説明している。いま、誰に、どのように見えているのかを表示することによって、それぞれが自分ごととして捉えるきっかけにする。そのための時計だ。
記者会見で、数値化することの意義を問われた江守さんは、こう答えている。
9時39分という数字が何を意味するかは、補足なしには伝わりにくい。だが、始めた頃は7時台だった針が、いまここにある。その推移とともに聞けば、なるほどと伝わるのではないか——。
数字そのものではなく、それをどう解釈し、どう受け取るか。
その部分を含めて、この時計は機能している。
9時39分。
針は、あと21分で10時に触れる。
だが会場で示された「私の環境危機時計」は、11時34分もあれば、8時54分もあった。同じ地球を見て、時刻は違う。
違っていい。
重要なのは、針の位置ではなく、針を動かしている力が何かを見ることだ。今年の調査が示したのは、その力の一部が、気候でも生態系でもなく、戦争と分断と諦めであるという事実だった。
自然は、人間が手を止めれば戻る力を持つ。野口さんが漁業の現場で確かめたのは、その一点だった。毛利さんが宇宙から見たのも、まだ汚れていない場所の広さだった。
地球は、まだ直せる。
問題は、直す仕組みを、誰がどう設計するかである。
Maintainable®︎NEWSでは、環境危機時計が示した現在地を起点に、脱炭素、自然再生、循環経済を横断する社会設計の課題を、引き続き取材していく。

公益財団法人旭硝子財団 島村琢哉理事長

第35回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」/第7回 生活者の環境危機意識調査
公益財団法人 旭硝子財団
https://www.af-info.or.jp/
調査結果・自由記述の抜粋
https://www.af-info.or.jp/questionnaire/result.html

FAQ

Q. 環境危機時計とは何ですか?
A. 旭硝子財団が1992年から毎年実施している、世界の環境有識者へのアンケートをもとに、人類存続に対する危機感を0時から12時までの時刻で表す指標である。0〜3時「ほとんど不安はない」、3〜6時「少し不安」、6〜9時「かなり不安」、9〜12時「極めて不安」とされる。

Q. 気温やCO₂濃度から計算されているのですか?
A. いいえ。気温や炭酸ガス濃度などのデータを時刻に換算したものではない。世界の有識者が地球環境の状態をどう捉えているか、その危機意識そのものを時刻として表したものである。

Q. 2026年の時刻はどうなりましたか?
A. 世界平均は9時39分。前年から6分進み、2年連続の前進となった。1996年以降、2000年を除いて一貫して9時台の「極めて不安」の領域にある。

Q. 地域によって差はありますか?
A. 大きい。アフリカは52分、東欧・旧ソ連は27分、メキシコ・中米・カリブ諸国は20分と針が進んだ一方、西欧、北米、オセアニアは17〜25分戻った。ただし後者はいずれも10時台のままである。日本は9分戻って9時30分だった。

Q. 時刻を決める際に、何が念頭に置かれているのですか?
A. 最多は「気候変動」で33%、次いで「生物圏保全性(生物多様性)」16%、「社会、経済と環境、政策、施策」13%。この順位は9年連続で変わっていない。ただし項目ごとの時刻では、生物多様性が9時52分ともっとも進んでいる。

Q. 脱炭素や自然再生の進み具合は、どう評価されていますか?
A. 脱炭素社会への転換は、一般の人々の意識、政策・法制度、社会基盤のいずれの観点でも2026年に評価が低下した。野生生物の生息地の保全・再生はさらに厳しく、世界全体の社会基盤の評価は0.00まで下がっている。

Q. 有識者と一般生活者では、危機意識に差がありますか?
A. ある。日本の有識者が9時30分だったのに対し、国内の生活者調査では7時3分。約2時間半の差がある。ただし生活者の側も「かなり不安」の領域にあり、不安を感じていないわけではない。

Q. 世代によって受け止め方は違うのですか?
A. 違う。国内調査では、危機意識がもっとも高いのは大人世代(7時27分)だが、「環境問題は解決できる」と答えた割合は高校生世代51.2%に対し大人世代26.6%と、約1.9倍の差がついた。危機感と希望が、世代で逆転している。

Q. 環境問題の解決に、いま何がもっとも重要とされていますか?
A. 有識者調査では、どの地域でも「政府の環境政策・リーダーシップ」が60〜79%で最多。次いで「国際協力・グローバルガバナンス」が40〜50%だった。「技術革新」を挙げる回答は多くの地域で少なかった。

Q. 企業はまず何から取り組めばよいのでしょうか?
A. 業種によって難易度が大きく異なる。電力の再エネ切り替えで大部分に対応できる業種がある一方、製造業や素材産業、エネルギー産業は生産技術そのものの転換が必要になる。加えて、真面目に取り組む企業が損をしない制度を求めて声を上げることも、企業の役割とされる。

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