
★要点
ソニーの「Boundary Spanning Service」は、事業開発・共同研究・業務提携の出会いを可視化し、探索→比較→アプローチ→マッチングまでを一気通貫で支援する共創プラットフォーム。2026年3月まで会員費無料のスキームで導入障壁を下げ、グループ各社とも横断接続できる。
★背景
脱炭素・人手不足・生成AIの普及で、単独企業の閉じた開発は限界。異業種アセットを素早く組み合わせ、PoCを反復する「越境の運用力」こそ競争力になる。
イノベーションを偶然ではなく設計できるか。ソニーは、スタートアップから大企業、研究機関までを横断的につなぐBoundary Spanning Serviceを前面に押し出した。狙いはシンプルだ。出会いを“運”に任せず、誰と、何を、どの条件で結ぶかをプロセス化すること。マッチングを事業のインフラに変える。
“探索→比較→アプローチ→成立”をUI化——マッチングを業務フローに落とす。
ブースで示されたのは、プロフィール作成→検索→候補比較→アプローチ→マッチングの5ステップ。企業規模や業種、キーワード、連携形態などで候補を絞り、社内外の関係者と検討を進められる設計だ。部門単位で情報公開範囲を制御できる点も実務的。新規事業部だけでなく、調達・生産・営業など間接部門の課題解決にも転用できる。2026年3月まで会員費は¥0。導入のための社内説得コストを下げる“地ならし”でもある。
“誰と組むか”を広げる——ソニーグループ横断×異業種接点。
同サービスの特長はグループ横断の接続にある。金融(ソニー銀行)、音楽・エンタメ(Sony Music)、半導体・イメージング周辺など、バリューチェーンの幅がそのまま探索空間になる。他方、掲載企業は航空、化学、建材、製造装置、物流などへ広がり、異業種の当たり前を取り入れやすい土壌をつくる。既存商品の新市場検証、社外アセットの内製化、研究成果のPoCパートナー探し——用途は広い。
“越境の運用”が価値になる——情報公開の粒度と条件設定。
研究段階の技術は慎重に、でも速く出会いたい——相反する要請に対し、指定業種や企業規模、条件設定、公開範囲の制御が用意される。個社の“見せたい・隠したい”の境界をUIで支える設計だ。部門別にアカウントを切って案件管理できるため、現場が回せる共創営業に落とし込める。越境の成功率は、先方との前提(スコープ・KPI・意思決定プロセス)をどれだけ初期に揃えられるかで決まる。プラットフォームは、その擦り合わせの“型”を提供する。
社会実装のスピードを上げる——PoCを“量”で攻める体制。
生成AI、脱炭素、ロボティクス、ヘルスケア……課題は縦割りでは解けない。Boundary SpanningはPoCの分母を増やす仕掛けだ。仮説→相手探し→試す→学ぶのループを短く回し、失敗の単価を下げる。重要なのは、マッチング“後”の並走だ。プロトタイプ支援、ユーザーテスト、知財・法務の壁越えなど、実装に必要な伴走メニューが揃えば、出会いが成果に変わるまでの距離は縮まる。
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“出会いの質と回数”を経営の指標に——共創を仕組みとして回す
◎共創を偶然の成果にせず、どれだけ多く・どれだけ深く“良い出会い”を生み出せたかを数として把握したい。
たとえば、テーマごとの有望な面談の数、初期合意までにかかる時間、試作(PoC)まで進んだ割合、部門をまたいだ協働の広がり、失敗から得た学びの再利用率——こうした動きを継続的に確認できる仕組みを整えれば、共創は単発のイベントから日常業務に変わる。
さらに、行政や大学と連携し、常設の“公開PoC横丁”のような場を設けることも有効だ。倫理・セキュリティ審査や標準契約、知財の取り扱いを整備し、安心して試せる環境を用意すれば、「越境」が当たり前の経営文化として根づいていく。
取材・撮影 柴野 聰
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