
★要点
森林率が高いことと、森と暮らしが結びついていることは、別の話である。
日本の森林率は68.4%(2023年)。世界18位で、スウェーデン(68.70%)とほぼ並ぶ。オーストリアは47.24%、イタリアは32.89%にすぎない。数字だけを見れば、日本のほうが「森の国」だ。
それでも、欧州のいくつかの地域では、森が住民の職業、住まい、音楽、そして暖房にまで直結している。何が違うのか。
本連載は、その差を「制度」として読み解く。今回は3つの地域から、3つの仕組みを取り出す。
①オーストリア・ブレゲンツァーヴァルト。約100社の職人が組織をつくり、「建築文化」を地域の共有財として運営している。
②イタリア・ヴァル・ディ・フィエンメ。1111年から続く共有林の統治機構が、2万haの森と牧草地を今も住民の名義で管理し、ヴァイオリンの響板材まで供給している。
③スウェーデン・ヴェクショー。1996年に市議会が全会一致で「化石燃料フリー都市」を決議し、地域の林業残材で熱の99%超を賄う。
職人組織。共有林の統治。熱の地域自給。この3つが、森林率という数字を暮らしへ翻訳する回路になっている。
★背景
日本には、森林率が9割に達する自治体がいくつもある。木材自給率も回復し、2024年は42.5%まで戻った。バイオマス発電も各地で動く。
つまり「木を売る」「エネルギーに使う」までは、すでに到達している。
足りないのは、その先だ。森の恵みが、住民の職業として、住まいの質として、地域の文化として還ってくる回路が、まだ設計されていない。
木材が売れても、加工は外に出ていく。バイオマス発電の電気は系統に流れ、地域の暖房費は下がらない。森は「資源」ではあっても、「暮らし」にはなっていない。
欧州の先進地が持っているのは、森林面積でも技術でもない。制度である。
誰が森を持ち、誰が決め、誰に還るのか。その設計図が、100年、900年という単位で維持されてきた。
気候変動、エネルギー価格の高騰、地方の人口減少。条件は厳しくなる一方だ。だからこそ、森を持つ地域が「何を持っていないか」を確かめておく必要がある。
森林率90%。
その数字を聞いて、豊かだと感じる人は多いだろう。実際、日本にはそれだけの森を抱えた自治体がいくつもある。
だが、その町の住民は、森で働いているだろうか。森の木でできた家に住み、森の熱で冬を越しているだろうか。森について、自分たちで決める権限を持っているだろうか。
森林率は、面積の話である。暮らしの話ではない。
オーストリアのブレゲンツァーヴァルト。イタリアのヴァル・ディ・フィエンメ。スウェーデンのヴェクショー。
この3つの地域には、共通点がある。森の恵みが、住民の職業と住まいと暖房にまで、きちんと降りてきている。
そして、それを支えているのは、木の量ではない。
制度である。誰が持ち、誰が決め、誰に還すのか。その取り決めが、ある地域では900年以上、ある地域では30年近く、動き続けている。
森と生きる都市は、自然にできあがるものではない。設計されたものだ。
連載第1回は、その設計図を3枚、並べてみる。
森林率90%は、出発点にすぎない
まず、数字を並べておく。
2023年時点の森林率で、日本は68.40%。194か国中18位である。スウェーデンは68.70%で17位。ほぼ同じだ。フィンランドは73.72%で10位。
一方、オーストリアは47.24%で52位。イタリアは32.89%で92位にとどまる。
本記事で取り上げる3地域のうち、2つは「国としては日本より森が少ない国」に属している。
それでも、これらの地域では森が暮らしの中心にある。
日本はどうか。木材自給率は2024年に42.5%。かつて2割を切っていた時期を思えば、大きく回復した。国産材の需要も、燃料用途を中心に増えている。
数字は悪くない。にもかかわらず、森を持つ地域の多くで、若い世代が出ていく。
理由は単純だ。木を売っても、その金が地域に落ちる量が限られる。丸太のまま出荷すれば、加工の付加価値は外に流れる。発電に使えば、電気は系統へ流れ、地域の暖房費は変わらない。
森があることと、森で暮らせることのあいだには、深い溝がある。
その溝を埋めているのが、これから見る3つの制度である。
ブレゲンツァーヴァルト——約100社の職人が「建築文化」を担う
オーストリア西端、フォアアールベルク州。スイスとドイツに接する山間の谷が、ブレゲンツァーヴァルト(ブレゲンツの森)である。
この地域は、建築の世界で名前を知られている。木造の学校、集会所、住宅、工房。素朴でありながら精緻な現代木造建築が、谷のあちこちに建つ。海外から建築を見るためだけに訪れる人がいるほどだ。
その中心にあるのが、1999年に設立された職人の組織「ヴェルクラウム・ブレゲンツァーヴァルト」だ。
設立当初、会員のおよそ3分の1は家具職人だった。2009年には工芸・デザイン・技術系の90社にまで広がり、現在はおよそ100社が名を連ねる(同会の公式サイトでは「95社近く」と記載されている)。
業種の幅が面白い。指物師、大工を中心に、錠前師、石工、左官、配管工、電気工、照明製作、塗装、椅子張り、仕立て、靴職人、桶職人、フェルト職人。
家を一軒建てて、暮らしを整えるのに必要な職能が、ほぼそろっている。
この組織が制度的に担っているのは、4つの領域だ。会員のサービスと発信。製品とデザインの革新。教育と訓練。そして、建築文化。
最後の「建築文化(バウクルトゥーア)」が、この地域を特別にしている。
建築文化は、通常なら建築家や行政の領域である。だがここでは、職人の組織が展示会や競技会、講演を通じて、それを地域の共有財として運営している。
象徴的な建物がある。2013年、アンデルスブーフに開館した「ヴェルクラウム・ハウス」だ。
設計は、スイスの建築家ピーター・ズントー。手仕事との深い親和性で知られる建築家である。建設費は約380万ユーロ。
そして施工したのは、会員企業自身だった。
自分たちの技術を見せるための建物を、自分たちで建てる。約700m²のホールには、展示、地域の手仕事製品と食品を扱う店、建築とデザインの専門書店、カフェが入る。
教育にも手を打っている。2016年からは、ベツァウの商業学校と共同で、職人の担い手を確保するための教育モデルを運営。徒弟、親方、デザイナーが一緒に設計した移動式の教材コンテナで、若者に手仕事を教える取り組みもある。
3年ごとに開かれる競技会「ハンドヴェルク+フォルム(手仕事+かたち)」は、25年以上の歴史を持ち、2026年で第10回を迎えた。デザイナーと職人が組み、素材とかたちに誠実な道具や家具を生み出す。
ここにあるのは、単なる同業者組合ではない。
職人が、自分たちの仕事を「文化」として定義し、教育し、発信し、次の世代へ手渡す装置である。
森から出た木は、この装置を通ることで、建築と生活の質に変わる。




ヴァル・ディ・フィエンメ——1111年から続く共有林と、響板の森
イタリア北部、トレンティーノ地方。ドロミテ山塊の西に開けたフィエンメ谷に、「マニフィカ・コムニタ・ディ・フィエンメ(フィエンメ荘厳共同体)」という組織がある。
最初の公的な認知は、1111年。トレント司教領との間で結ばれた協定は、司教ゲバルドの名から「ゲバルディーニ協定」と呼ばれる。谷の住民は、税と政治的忠誠を負う代わりに、広範な自治を得た。
それから900年以上。この共同体は、いまも実在し、機能している。
管理する土地は2万ha超。内訳は、森林が約63%、牧草地が30%超、残りが非生産的な土地。谷の面積のおよそ半分にあたる。森林だけで1万2千haほどになる。
所有者は、企業でも自治体でもない。「ヴィチーニ(隣人たち)」と呼ばれる、谷に根を持つ住民たちである。カヴァレーゼ、テーゼロ、プレダッツォ、ジアーノ・ディ・フィエンメ、モエナといった谷の各自治体に暮らす人々が、代表を選ぶ。選ばれた代表による合議体が意思決定を行い、その頂点に「スカリオ」と呼ばれる中世以来の役職が立つ。
運営は感覚ではない。森林は10の管理区に分けられ、それぞれに森林経営計画がある。計画は20年ごとに見直される。技術部門として森林技官が置かれ、FSCとPEFCの認証を取得している。
数字が、この統治の質を語る。
蓄積されている木材は370万m³超。年間に伐採してよい量は44,000m³超。一方、森が1年に成長する量は約64,000m³。
つまり、育つ量より少なく伐っている。
共同体は、この量を「1日あたり、120m²の家を1軒建てられる木材」と説明する。
そして自前の製材工場を、ジアーノ・ディ・フィエンメに持つ。丸太で売らない。加工して売る。付加価値を谷の中に残す仕組みが、組織の中に組み込まれている。
もうひとつ、この谷を有名にしているものがある。響板材だ。
フィエンメ谷の森林面積の約95%はトウヒ(アカエゾマツの仲間)で、高さは40mを超えるものも多い。標高と気候の条件が重なると、年輪が細かく均一に詰まった個体が現れる。その木は、音をよく響かせる。
弦楽器の表板——響板に使われる木である。
アントニオ・ストラディヴァリが、フィエンメとパネヴェッジョの森から木を仕入れていたという伝承が残る。18世紀、仲買人たちがこの谷を巡り、響く木を探した。
谷には6千万本を超える木があると言われる。そのうち、楽器になれるのはごくわずかだ。
森を持つとは、こういうことでもある。ほとんどの木は建材や紙になり、ごく一部が音楽になる。その選別を可能にしているのは、900年にわたって同じ森を見続けてきた蓄積である。
共有林は、非効率に見えるかもしれない。合議には時間がかかり、一人の判断では動かせない。
だが、その遅さこそが、20年単位の計画と、成長量を下回る伐採量を成立させている。
誰かが売り抜けようとしたら、900年は続かなかった。



ヴェクショー——石油危機から始まった、森の熱による自立
スウェーデン南部、スモーランド地方。人口およそ9万人の都市ヴェクショーは、1996年、市議会が全会一致である決議を採択した。
化石燃料に依存しない都市になる。目標年は2030年。
世界で初めて「化石燃料フリー都市」を掲げた自治体とされる。1992年の国連環境開発会議で採択されたアジェンダ21が、直接の後押しになった。
だが、話はもっと前から始まっている。
1960年代、この街は汚染された湖の再生に取り組んでいた。泳げないほど汚れた湖を、住民が取り戻した経験が、環境政策の土台になった。
そして1980年。地域熱供給にバイオマスを使う試みが、成果を出し始める。
動機は、環境保護だけではなかった。石油価格の高騰である。そして、エネルギーを他国に依存し続けることへの危機感だった。
スウェーデンは森の国だ。製材所や林業の現場からは、樹皮、端材、枝葉といった残材が大量に出る。それを燃やして湯を沸かし、街に配る。
シンプルな発想である。だが、実装には長い時間がかかった。
40年以上を経た現在、成果は数字に表れている。
地域熱供給に使うエネルギーの99.99%が再生可能。市全体でも熱の99%が再エネで賄われる(2023年)。熱電併給プラントは2019年に再エネ100%を達成し、2020年以降その水準を維持している。
熱供給網は約500km。燃料は、ヴェクショーから半径70km以内の林業残材である。
二酸化炭素の排出は、1993年から2023年までに6割超削減された。2014年時点の統計では、住民1人あたりの排出量は2.4トンで、EU平均7.3トンの3分の1以下だった。
2013年からは市内のバスがすべて地域産バイオガスで走る。2018年には欧州グリーンリーフ賞を受賞している。
ここで重要なのは、順番だ。
ヴェクショーは「環境のために」始めたのではない。石油が高くなり、他国に頼る危うさが見えたから始めた。結果として、環境の成果がついてきた。
2020年代、この順番はふたたび現実味を帯びている。エネルギー価格の乱高下、供給網の地政学的リスク、輸入依存の脆さ。
地域で熱を賄うということは、価格変動と国際情勢からの防御でもある。域内で資源を循環させることが、そのまま安全保障になる。
森の残材で街を暖める。それは環境政策であると同時に、きわめて現実的な生存戦略だった。
日本に引くべき、3本の補助線
3つの地域から取り出した、3つの制度を整理しておこう。
①職人の組織化
ブレゲンツァーヴァルトのヴェルクラウムは、木を扱う技能を持つ人々を横につなぎ、教育し、発信し、「建築文化」という共有財として運営している。
木材が売れることと、木を扱える人が地域にいることは、別である。後者がなければ、森の木は丸太のまま外へ出ていく。
②共有林の統治
フィエンメの共同体は、森の所有と意思決定を住民の手に置き、20年単位の計画で管理し、加工まで自前で行う。誰に還るのかが、900年前から決まっている。
森林組合や財産区といった仕組みは日本にもある。だが、住民が主体として意思決定に関わり、受益が明示的に配分される設計になっているかどうかは、別の問題だ。
③熱の地域自給
ヴェクショーは、電気ではなく熱から始めた。ここが肝である。
発電した電気は系統に流れて出ていく。だが熱は遠くへ運べない。だからこそ、地域に留まる。冬の暖房費が下がれば、その効果は全世帯に直接届く。
日本のバイオマス政策は、発電に寄りすぎてきたのではないか。熱をどう配るか、そこに設計の余地がある。
職人組織、共有林の統治、熱の地域自給。
この3つがそろったとき、森林率という数字は、暮らしの質に変換される。
そして——これらの条件を部分的に満たす自治体は、日本にも存在する。森林率が9割に達し、木材を売り、熱利用にも踏み出している地域は、たしかにある。
そこに足りないのは、面積でも技術でもない。
森の恵みを、住民の職業と住まいと文化へ還す回路の設計ではないかと思う。
本連載「森と生きる都市」は、全5回予定。次回以降、欧州のさらに具体的な運営の中身、北米・アジアの事例、そして日本国内でこの条件を満たしつつある地域へと、順に踏み込んでいく。
森林率90%は、出発点にすぎない。
問いは、その先にある。
【参考】
Werkraum Bregenzerwald(公式)
https://www.werkraum.at/
https://www.werkraum.at/en/the-building/about-the-werkraum-haus
Bregenzerwald観光局:Werkraum Bregenzerwald
https://www.bregenzerwald.at/en/good-to-know/werkraum-bregenzerwald/
Magnifica Comunità di Fiemme(公式)
https://mcfiemme.eu/
Magnifica Comunità di Fiemme:「森林」ページ
https://www.mcfiemme.eu/foreste/
Magnifica Comunità di Fiemme:「territorio」ページ(響板材とストラディヴァリ)
https://mcfiemme.eu/foreste/il-territorio/
Visit Trentino:マニフィカ・コムニタ・ディ・フィエンメの森
https://www.visittrentino.info/it/articoli/arte-e-cultura/bosco-magnifica-comunita-fiemme
EU Covenant of Mayors:Over 99% of renewable heat in Växjö since 2020
https://eu-mayors.ec.europa.eu/en/over-99-of-renewable-heat-in-vaxjo-since-2020
UNEP Copenhagen Climate Centre:Växjö – Fossil Fuel Free City
https://c2e2.unepccc.org/kms_object/vaxjo-fossil-fuel-free-city/
Nordregio:Green Growth in Nordic Regions – Växjö, Europe’s greenest city
https://archive.nordregio.se/en/Publications/Publications-2016/GREEN-GROWTH-IN-NORDIC-REGIONS-50-ways-to-make-/Green-cities-and-municipalities-/Vaxjo-/index.html
林野庁:森林・林業白書
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/
FAQ
Q. 森林率が高ければ、森と暮らしは結びつきますか?
A. 結びつくとは限らない。日本の森林率は68.40%(2023年)で世界18位、スウェーデン(68.70%)とほぼ同じ水準にある。一方、本連載で取り上げるブレゲンツァーヴァルトのあるオーストリアは47.24%、ヴァル・ディ・フィエンメのあるイタリアは32.89%にすぎない。差を生んでいるのは面積ではなく、森の恵みを暮らしへ還す制度である。
Q. ヴェルクラウム・ブレゲンツァーヴァルトとは何ですか?
A. 1999年に設立された、オーストリア・ブレゲンツァーヴァルト地方の職人による組織である。設立当初は会員の約3分の1が家具職人で、2009年には工芸・デザイン・技術系の90社、現在はおよそ100社が参加する。会員サービス、製品・デザイン革新、教育訓練、建築文化の4領域を制度的に支えている。
Q. ヴェルクラウム・ハウスとは?
A. 2013年にアンデルスブーフに開館した、ヴェルクラウムの拠点施設である。設計はスイスの建築家ピーター・ズントー。建設費は約380万ユーロで、施工は会員企業自身が担った。約700m²のホールに、展示、地域の手仕事製品と食品を扱う店、専門書店、カフェが入る。
Q. マニフィカ・コムニタ・ディ・フィエンメとは何ですか?
A. イタリア北部フィエンメ谷にある、住民による共有財産の管理機構である。最初の公的な認知は1111年、トレント司教領との間で結ばれた「ゲバルディーニ協定」にさかのぼる。谷に暮らす「ヴィチーニ」と呼ばれる住民が代表を選び、合議によって森と牧草地を管理する仕組みが、900年以上続いている。
Q. フィエンメはどれくらいの森を管理していますか?
A. 管理する土地は2万ha超で、内訳は森林が約63%、牧草地が30%超。森林面積はおよそ1万2千haにあたる。10の管理区に分けられ、それぞれ20年ごとに見直される森林経営計画のもとで運営され、FSCとPEFCの認証を取得している。
Q. 「育つ量より少なく伐る」とは、どういう意味ですか?
A. フィエンメの森に蓄積されている木材は370万m³超。年間に伐採してよい量は44,000m³超と定められている一方、森が1年に成長する量は約64,000m³ある。伐採量が成長量を下回るため、森の蓄積は減らずに増えていく。長期の計画と合議による統治が、この抑制を可能にしている。
Q. なぜフィエンメの木がヴァイオリンに使われるのですか?
A. 谷の森林面積の約95%を占めるトウヒのうち、標高や気候の条件が重なった個体には、年輪が細かく均一に詰まり、音をよく響かせるものがある。弦楽器の表板(響板)に適した木である。18世紀、アントニオ・ストラディヴァリがフィエンメとパネヴェッジョの森から木を仕入れていたという伝承が残る。
Q. ヴェクショーはどのように熱を賄っていますか?
A. 地域熱供給に使うエネルギーの99.99%が再生可能で、市全体でも熱の99%が再エネで賄われている(2023年)。燃料は市から半径70km以内の林業残材。熱供給網は約500kmに及ぶ。1996年に市議会が全会一致で化石燃料フリー都市を決議し、目標年を2030年に置いた。
Q. ヴェクショーの転換は、環境政策として始まったのですか?
A. きっかけは環境だけではない。本格的な転換が始まった1980年当時の動機は、石油価格の高騰と、エネルギーを他国に依存し続けることへの危機感だった。地域で熱を賄うことは、価格変動や国際情勢のリスクに対する防御でもある。域内資源の循環が、そのまま安全保障につながるという構図である。
Q. 日本の森林自治体に足りないものは何ですか?
A. 木材を売ること、エネルギーに使うことまでは、すでに多くの地域が到達している。足りないのは、森の恵みを住民の職業、住まいの質、地域の文化へ還す回路の設計である。具体的には、職人の組織化、住民が意思決定に関わる森の統治、そして電気ではなく熱を地域で自給する仕組みの3点にあたる。
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