★ここが重要!

★要点
2026年10月1日からの「サーキュラーエコノミーアクションWeek」を目前に控え、循環経済をめぐる議論が熱を帯びている。しかし、華やかな理念の一方で、国の統計が示したのは「資源を製品へ戻す導管」が十分に機能していない可能性だった。
環境省が2026年9月17日に公表した「第五次循環型社会形成推進基本計画」の第1回点検結果によると、資源生産性は約50.9万円/トンと向上傾向にあるものの、出口側の重要指標である循環利用率は2013年のピーク時46.1%から2023年には約43.6%へと低下している。
この目詰まりを打破すべく、いま静脈産業の「上流」と「下流」の双方向から構造改革が動き始めている。
上流では、2026年6月19日に公布された改正廃棄物処理法を受け、これまで自治体の規制が及びにくく不適正保管や火災が問題視されていた「使用済金属・プラスチック製品保管施設(スクラップヤード)」の許可制度導入に向け、環境省が技術基準策定の検討を進めている。
一方の下流では、セブン‐イレブン・ジャパン、伊藤忠プランテック、パナソニックEWの3社が、店舗の改装・閉店時に撤去した受電設備を診断・選別し新店仕様へ再構築する「リマニキュービクル」の運用開始(9月15日)を発表した。
なぜ集めた資源は製品に戻らないのか。「上流の保管の質」と「下流の製品へ組み直すリマニ技術」という2つの現場から、日本のサーキュラーエコノミーが越えるべき実務の壁を検証する。

★背景
経済産業省をはじめ官民が「サーキュラーエコノミーへの移行」を掲げ、再生可能素材やリサイクル技術の導入事例が連日メディアを賑わせている。しかし、マクロ統計に目を向けると、最終処分量こそ約79%削減(2000年比)されているものの、社会に投入された資源のうちどれだけが再び素材や製品として循環しているかを示す「循環利用率」は過去10年で減少傾向にある。
回収された資源を再び素材や製品へと戻す「マテリアルリサイクル」や「リマニュファクチャリング(再製造)」が、社会全体で十分にスケールしていない現状がうかがえる。
その背景には、静脈チェーンにおける2つの大きな課題が存在する。
第一に、回収・集積を担う上流現場の課題だ。金属やプラスチックのスクラップヤードが法的な規制外に置かれるケースが多く、適切な分別や安全管理が徹底されにくい構造が指摘されていた。
第二に、回収された重電設備や産業機械を「もう一度、工業製品の品質基準へ戻す下流の技術とビジネスモデル」が限られていた点である。
この上下流の分断を埋めない限り、循環利用率の反転は望めない。

数字の上では、資源を無駄にしない社会へと進んでいるように見える。
国内で投入された資源からどれだけの付加価値を生み出したかを示す「資源生産性」は、1トンあたり約50.9万円へと着実に上昇した。
ごみの最終処分量も、ピーク時から8割近く減っている。
だが、環境省の点検シートの片隅に刻まれたもうひとつの数字が、循環の現実を静かに示している。
「循環利用率 43.6%」。
2013年に46.1%に達して以降、集めた資源を再び社会で使い回す比率は、緩やかな低下傾向にある。
効率的に使い、ごみを減らしてはいる。しかし、一度使ったモノを再び「製品」へと還す道筋は、まだ細い。
集めたはずの資源は、なぜ製品の輪へスムーズに戻らないのか。
規制が入り始めたヤードの現場と、重電機器を現場で組み直すリマニの実務から、その理由を探る。

46.1%から43.6%へ――循環利用率が語る「出口の目詰まり」

環境省が2026年9月17日に公表した「第五次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第1回点検結果」は、日本の資源循環が抱える構造的な課題を浮き彫りにした。
経済活動の効率性を示す「資源生産性」は約50.9万円/トンまで伸び、最終処分量も約79%減(2000年比)と大幅な圧縮に成功している。一見すると循環型社会の構築は着実に前進しているように見える。
しかし、社会に循環投入された原材料の割合を示す「循環利用率」は、2013年のピーク(46.1%)から2023年には約43.6%へと2.5ポイント低下していた。
これは、回収された資源を高品位な素材や製品として国内の製造ラインへ再投入する仕組みが、なお十分にスケールしていないことを示唆している。
どれほど「サーキュラー」を標榜しても、集めた資源を製品へ戻す導管(静脈チェーン)が目詰まりしていれば、循環利用率の数字は上がらない。

環境省ホームページより

環境省ホームページより

上流の壁:規制が及びにくかったスクラップヤードに「許可制」が入る理由

この出口の目詰まりに関わる大きな要因のひとつが、静脈チェーンの最上流にある「回収・保管現場の管理体制」である。
街中や郊外で見かける金属・プラスチックのスクラップヤードは、これまで廃棄物処理法の対象外となる有価物ヤードとして扱われるケースが多く、自治体の規制が及びにくい領域となっていた。その結果、雑多な金属やプラスチック製品の不適正な野積みにより、火災事故の発生や油・有害物質の流出といった環境リスクが懸念されていた。
これに対応すべく、2026年6月19日に公布された改正廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律)において、「使用済金属・プラスチック製品の保管施設に対する許可制度」が新設された。
環境省は、施行期日に向けた保管基準や自治体・事業者向けガイドラインを整備するため、「スクラップヤード環境対策技術検討会」などで技術的検討を進めている。
この制度化の本質は、生活環境保全や火災防止にとどまらない。
適切な管理基準を設けることで、「適正に分別・保管された均質な資源」へと上流のクオリティを引き上げる狙いがある。上流の保管と受入の質が担保されなければ、下流の高度リサイクル工場に届く原料の純度も上がらないためだ。

下流の壁:撤去した受電設備を新店へ戻す「リマニキュービクル」の実務

上流の品質確保と同時に求められるのが、使用済み製品を単に破砕するだけでなく、製品の機能レベルで再循環させる「リマニュファクチャリング(リマニ)」の社会実装である。
その先駆的な実務例として9月15日に発表されたのが、セブン‐イレブン・ジャパン、伊藤忠プランテック、パナソニック エレクトリックワークス(EW)による「リマニキュービクル」の運用開始だ。
キュービクル式高圧受電設備は、店舗や商業施設の電力を受電・変圧する重要インフラであり、頑丈な金属筐体と遮断器、変圧器などの重電機器で構成されている。
これまでの店舗改装や閉店時には、撤去されたキュービクルを新店仕様へ再構築して国内店舗で再利用する仕組みは限られていた。
今回のスキームでは、

  1. 状態診断:撤去したキュービクルを回収し、専門エンジニアが内部機器の健全性を診断する。
  2. 部品選別:再利用可能な筐体や変圧器等を選別し、経年劣化した部品を交換する。
  3. 新店仕様へ再構築:最新のセブン‐イレブン店舗仕様に合わせて再配線・再組み立てを行い、新品同様の状態で新たに店舗へ設置する。

重電機器という高い安全性・信頼性が求められる設備において、状態診断と選別技術を噛み合わせることで「製品から製品へ戻す」ループを成立させた。現時点ではCO₂削減量や新品調達とのコスト差は公表されていないものの、BtoBの基盤インフラにおけるリマニ実装として極めて示唆に富む。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンホームページより

再生材を信用させる条件――環境省が補助対象にした「品質分析」

上流の保管規制と下流のリマニの双方に共通する核心課題は、「その素材・部品の品質をどう証明するか」という点にある。
天然資源(バージン原料)は規格が定まっており物性が均一だが、使用済み製品から回収された再生材や再利用部品は、使用履歴によって劣化状態や不純物にばらつきが生じやすい。製造メーカーが再生材の利用に慎重になる大きな要因は、物性のばらつきに対する懸念にある。
この課題を如実に示しているのが、環境省が9月18日に公表した「令和8年度再生材供給サプライチェーン構築支援事業」の公募要領である。
補助率上限1/2を支援する同事業において、支援対象の設備として破砕機や選別設備と並び、明確に「品質分析設備」が明記された。
再生材が市場で信用されるためには、成分や物性、安全性が正確に測定・証明できる環境が不可欠であることを、行政支援の枠組みが裏付けたといえる。

メンテナンスと選別を抜きにした循環経済は成立しない

2026年9月、静脈産業の現場では他にも象徴的な動きが連動している。
三菱マテリアルは秋田工場に約80億円を投じ、超硬工具に不可欠なタングステンのリサイクル生産能力を年2,400トンへ倍増させる投資を発表(9月9日)。年間約1,200トンの輸入原料を国内リサイクル品へ置き換える構えだ。
またDOWAエコシステムは、使用済み電動車の駆動モーターに含まれるネオジム磁石等を高効率に回収・再資源化する技術実証(環境省公募事業採択、9月発表)に乗り出している。ここでも「解体しやすさが回収率を左右する」という設計と分解(メンテナンス性)の連動が焦点となっている。さらにJA三井リースアセットと浜田の提携(9月1日)に見られるように、2030年代後半に年間数十万トン規模の排出が見込まれる使用済み太陽光パネルを「廃棄物ではなく循環すべきアセット」として位置づける動きも出始めた。
これらすべての現場が示しているのは、ただ回収箱を置き、破砕機を回すだけの循環モデルの限界である。
どれほど排出量が多くても、上流で適正に保管・選別されなければ高品位な素材には戻らない。下流で分解・診断・再構築するメンテナンス技術がなければ製品には還らない。
循環利用率43.6%という数字は、こうした現場の実務課題に目を向ける必要性を示している。
上流ヤードの法制度化と、下流のリマニュファクチャリング。
動脈と静脈の接合面を手入れする実務が確立されて初めて、資源をもう一度、素材や製品として戻す循環へと近づいていく。

【参考】

環境省:報道発表「第五次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第1回点検結果について」(2026年9月17日発表)
https://www.env.go.jp/press/press_05589.html

環境省:スクラップヤード規制に係る検討事項と論点整理
https://www.env.go.jp/content/000427468.pdf

環境省:報道発表「令和8年度再生材供給サプライチェーン構築支援事業の公募について」(2026年9月18日公表)
https://www.env.go.jp/press/press_05450.html

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン/伊藤忠プランテック株式会社/パナソニック エレクトリックワークス社:プレスリリース「撤去したキュービクルを再活用!『リマニキュービクル』運用開始」(2026年9月15日発表)
https://www.sej.co.jp/company/news_release/news/2026/202609151300.html

三菱マテリアル株式会社:日本新金属におけるタングステンリサイクル能力増強投資について(2026年9月9日発表)
https://news.mmc.co.jp/corporate/ja/newsroom/press/news20260909.html

DOWAエコシステム株式会社:電動車駆動モーター由来のレアアース磁石リサイクル技術の実証が環境省公募事業に採択(2026年9月発表)
https://www.dowa-eco.co.jp/release/20260910_3102.html

JA三井リースアセット株式会社/株式会社浜田:業務提携契約の締結について(2026年9月1日発表)
https://www.jamitsuilease.co.jp/news/pdf/20260901.pdf

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