日本のマンション業界に革命をもたらす新たな取り組み、「マンション管理適正評価制度」が導入された。この制度は、マンションの健全な管理を促し、長期的な居住価値の向上を図ることを目的に、一般社団法人マンション管理業協会が主導し、不動産関連団体と協力して全国共通の評価基準を策定したものだ。この新基準に基づき、マンションの管理状態や管理組合運営を6段階で評価し、結果をインターネット上で公開する。

長年に渡るマンション業界の課題

この制度では、マンションの管理状態を総合的に評価するために、5つのカテゴリーに分類し、30項目について評価を行う。これには管理体制、建築・設備の維持管理、管理組合収支の安定性、耐震診断、生活関連の環境づくりなどが含まれる。例えば、管理体制では管理組合の事業計画や会計監査機能の有無などが、建築・設備では計画的な修繕工事の実施計画や保守点検の実施状況などが評価される。

この制度の導入背景には、マンションの高経年化と居住者の高齢化がある。国土交通省の推計によると、2020年末時点での全国の分譲マンションのストック数は約675.3万戸。そのうち築40年を超えるマンションは約103.3万戸にのぼり、これらの数字は今後さらに増加する見込みである。これに伴い、管理組合財政の逼迫化や窮乏化が進行しており、管理組合の収入減少や建物の老朽化による支出増大が問題となっている。

良質な管理によるマンションの価値向上

そんな時代を背景に、「良質な管理」がマンションの市場価値や流通価値を高めることが期待されている。良好な管理状態のマンションは、居住満足度が高く、長期的に健全なストック形成が期待できるからだ。これにより、管理の質が高く保たれることが期待されるとともに、管理組合の財政健全化や適切な修繕の実施などに資する有効なスパイラルが生まれる可能性がある。

マンション管理適正評価制度は、これらマンションが抱える多くの課題に対する解決策として多方面から期待されている。この制度を利用することで、マンションの管理状態を定期的にチェックし、問題点を早期に発見・対応することが可能になる。そうすることで、マンションの長期的な価値を守り、居住者にとって快適な生活環境を提供することができる。

評価結果の公開は、マンション購入を検討している人々にとって重要な情報となる。評価制度によって得られた情報を参考に、購入前にマンションの管理状態や将来の維持管理計画を把握することができ、管理組合にとっても、評価結果を基に管理体制の改善や計画的な修繕計画の見直しなど、具体的なアクションを起こすきっかけになり得る。

マンションの価値は管理によって変化する

マンション管理適正評価制度は、マンション管理の新たな標準を確立しようとするものだ。この制度を通じて、マンション管理の透明性が高まり、良質な管理が一般化することで、マンション市場全体の信頼性が向上することは明らかだ。長期にわたる良質な管理状態は、最終的にはマンションの資産価値を守ることに繋がり、居住者だけでなく、マンションを取り巻くすべての人々にメリットをもたらすだろう。

マンション管理適正評価制度は、単にマンションの現状を把握するためだけではなく、将来にわたって良好な居住環境を維持し、マンションとしての価値を高めるための重要なツールと考えられる。この制度が普及し、適切に活用されることで、マンション業界全体の質の向上が期待され、管理組合、居住者、そしてマンションを取り巻くすべてのステークホルダーが、この制度を有効に利用することで、より良いマンションライフを実現するための一歩を踏み出すことができるだろう。

詳しくは(一社)マンション管理業協会ホームページで