東京大学と韓国延世大学などの研究チームは、長野市をモデル地域として、木造住宅の年間暖房負荷をシミュレートし、5種類の暖房方法によるCO2排出量を比較した。その結果、木質バイオマスボイラーが、他の燃料に比べて最大85%のCO2削減効果を持つことが分かった。
世界第5位の温室効果ガス排出国・日本に期待される木質バイオマスの普及
長野県長野市を対象地域として選定したこの研究では、化石燃料を使用する暖房機器と、木質バイオマスボイラーのCO2排出量を比較した。研究の結果、木質バイオマスボイラーは、電気ヒートポンプエアコンや都市ガス、灯油などの化石燃料を使用する暖房機器に比べ、最大85%のCO2排出量削減が可能であることが明らかになった。
この試算には、1999年に建築研究所(BRI;Building Research Institute)が提案した8つの気候区域に基づくシミュレーションが用いられた。長野市は「区域4」に属し、年間暖房負荷は7.94 GJと計算された。これを基に、一次および二次エネルギー消費とCO2排出量が推定された。
日本は世界第5位の温室効果ガス排出国であり、地球温暖化対策として世界からCO2削減が求められている。特に寒冷気候地域で使用されている暖房エネルギー源としての化石原料のCO2排出量削減は急務となっている。
その中で、木質バイオマスは、木材を主な原料とし、日本の豊富な森林資源を活用することが可能で、比較的安価に導入できるエネルギー源として注目されている。
今回の研究結果は、木質バイオマスボイラーが化石燃料駆動の暖房機器に比べ、CO2排出量の大幅な削減に貢献する可能性を示した。再生可能エネルギー源としての木質バイオマスの普及は、地球温暖化対策に大きく寄与する。
木質バイオマスボイラーの普及を促進するためには、導入コストの軽減や政策的な支援が重要である。家庭用ペレットボイラーの購入補助政策が導入されれば、さらに多くの家庭での導入が進み、環境保護に向けた一助となる。
この研究成果は、2024年8月10日に国際学術誌「Results in Engineering」にオンラインで公開された。研究は、東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻の助教である金鉉倍氏、同研究科の吉岡拓如准教授、韓国延世大学の金秀珉教授らによる国際共同研究の一環として行われた。