日本国内の大学および研究機関が、気候変動への対策や持続可能な未来の実現に向けた取り組みを強化している。京都大学、東京大学、国立環境研究所が、気候変動の影響を予測し、社会の適応を支援するための新たな研究センターを設立し、それぞれの分野で独自の研究を推進している。

京都大学、東京大学、国立環境研究所が主導する新たな気候変動研究拠点

地球温暖化や異常気象などの気候変動が人々の生活や生態系に大きな影響を与える中、日本の大学や研究機関が気候変動対策の最前線で重要な役割を果たしている。

1.京都大学 防災研究所 気候変動適応研究センター
2024年7月1日に設立された同センターは、気候変動に伴い将来激甚化が懸念される気象災害・水災害の予測や社会の適応に関する研究を推進。
特に「ハザード統合予測モデル」の開発では、風水害や水資源問題に関するプロセスモデルを高度化させて将来の極端現象の予測を可能にしている。
また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書に対応する形で、イベント・アトリビューション(EA)研究も進行中。過去の極端気象現象を分析し、気候変動が災害に及ぼす影響を定量化して、防災気候情報の提供を目指す。
http://www.castr.dpri.kyoto-u.ac.jp/

2.東京大学 先端科学技術研究センター グローバル気候力学分野
小坂准教授の研究チームは、大気や海洋の相互作用で発生し、遠く離れた地域にも影響を与える「遠隔影響」というメカニズムが、異常気象や極端気象の発生にも関与していることを証明した。
気候変動の要因を人為起源と自然変動に切り分けて研究し、地球温暖化の停滞期(ハイエイタス)の原因解明に貢献。
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/kosaka_lab.html

3.国立環境研究所 気候変動適応センター
同センターは、過去から現在に至る観測値の変化に基づく気候変動の影響の検出や、気候・社会経済シナリオに基づく影響予測、適応策の戦略的推進のための施策提案などを行っている。
特に、生態系や大気環境、健康への影響を観測し、それらに対応するための科学的知見を提供することで、政府や地方自治体、民間企業の適応策立案を支援している。
https://ccca.nies.go.jp/ja/index.html

4.東京大学 気候と社会連携研究機構
同機構は、気候変動の理解と予測、生態系への影響評価、将来の社会システムデザイン、カーボンニュートラルに向けた行動変容など、自然科学・社会科学・人文学を融合した研究を展開。
特に、文部科学省主導の長期プロジェクトの一環として、国産の気候モデル「MIROC」を用いた地球シミュレーションで温暖化予測を実施。このデータはIPCCの報告書にも活用されるなど、国際的にも高い評価を得ている。
https://utccs.u-tokyo.ac.jp/