帯水層蓄熱システム(Aquifer Thermal Energy Storage, ATES)は、地下に存在する帯水層を利用して熱を蓄え、季節をまたいでエネルギーを再利用する先進技術。夏季の冷房で発生する排熱を帯水層に蓄え、冬季の暖房に活用するシステムだ。また、冬季の冷排熱を夏季に再利用することも可能で、こうした仕組みは、エネルギーの効率的な利用とCO2排出削減に大きく貢献する。

地下の帯水層を活用した次世代の蓄熱技術「帯水層蓄熱システム(ATES)」。

帯水層蓄熱システム(ATES)は、オランダでは建物空調における再生可能エネルギー技術として広く普及している一方で、日本国内では地層の複雑さや技術的課題、法規制の制約などがこれまで導入を妨げてきた。しかし近年では技術開発が進み、日本における普及への道が徐々に切り拓かれている。
中央開発株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:田中誠)は、このATESの普及を目的とした技術支援と事業推進を積極的に行っている企業だ。同社は地中熱を活用し、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを展開している。
地中の温度は、地下10~15メートル以上の深さで年間を通じて一定を保ち、地域の平均気温に1℃程度加わる。この性質を活用することで、夏季は涼しく、冬季は暖かい空気を空調に利用できるのだ。さらに冷暖房の排熱を帯水層に蓄え、季節を超えて再利用することで、従来よりも大幅なエネルギー削減が可能となる。

出典:環境省ホームページ(https://www.env.go.jp/index.html

【同社の事例より】
■愛三工業株式会社 新工場への導入
愛三工業株式会社(本社:愛知県大府市、社長:野村得之)は、新工場における脱炭素化を目指し、帯水層蓄熱システムの導入を検討している。同プロジェクトでは、中央開発が井戸設置業務や帯水層の利用可能性の評価を行い、エネルギー効率の高い空調システムの構築を支援している。
■大阪市 うめきた広場再開発プロジェクト
大阪市ではヒートアイランド現象の緩和と地球温暖化対策の一環として、帯水層蓄熱システムを活用した取り組みを進めている。中央開発は2015年からこのプロジェクトに関与し、技術開発と普及を支援してきた。同市域における地盤環境に配慮した地下水利用の成果は、他地域への展開可能性を示すモデルケースとなっている。

高度な井戸掘削技術が支えるATES。

ATESシステムの実現には、井戸掘削技術が重要な役割を果たす。中央開発では「リバースサーキュレーション工法」を採用し、帯水層の透水性を損なうことなく高効率な掘削を可能としている。この工法では、粘度やpHの管理を徹底し、地層への影響を最小限に抑えることができる。またエアリフトによる掘屑回収を通じ、リアルタイムで地質情報を確認できる点も大きな特長だ。
1946年創業の中央開発は、日本初の地盤コンサルティング会社としてスタートし、標準貫入試験の実用化をはじめ、多くの技術革新を牽引してきた。現在では「地質DX」を掲げ、点群データ解析やAI活用を通じた新たな価値創造に取り組んでいる。同社が実践するATES技術の普及は、日本における再生可能エネルギーのさらなる活用と持続可能な社会の構築に向けた重要なステップと考えられる。

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