東京大学は2027年9月、約70年ぶりとなる新学部「UTokyo College of Design」を開設する。創立150周年の節目を迎える同大学が打ち出すこの構想は、デザインを単なる造形の枠に留めず、複雑化する社会課題に挑むための「創造的な学び」として再定義する意欲的な取り組みだ。文部科学省への設置申請に向けた構想段階であるものの、その全体像はすでに世界的注目を集めている。

「デザイン」は形を超え、知をつなぐ。異分野融合型の教育で次代を切り拓く。

東京大学が今回打ち出した「UTokyo College of Design」は、単なる新学部の設置ではない。気候変動、高齢化、AI社会など、多様な課題が交錯する21世紀の世界において、学術の役割を再構築する試みといえるだろう。
藤井輝夫総長のリーダーシップのもと構想されたこの新教育課程は、「デザイン」を、モノや空間の造形だけでなく、価値創造や社会システムの設計まで含む“知のアプローチ”として再定義する。「単一分野では解決できない複雑な課題に挑むには、異なる知の統合が不可欠だ」と大学関係者は語る。
教育プログラムは学士・修士一貫の5年制。すべての授業が英語で行われ、国内外から選抜された100名の学生(うち外国人と日本人がほぼ半数ずつ)が、本郷キャンパスに設けられる新しい学習環境で学ぶ。特筆すべきは、全学の知を結集した「Interdisciplinary Perspectives(学際的視点)」に基づいた講義群と、アクティブラーニング中心の教育設計だ。
ユーザー理解やプロトタイピング、ストーリーテリング、AIやデータ活用といった、イノベーションに欠かせないスキルを“思考の方法としてのデザイン”とともに学ぶ。個人プロジェクトやグループワーク、長期インターンシップなど実践を通じ、学生は柔軟な思考力と実行力を鍛えていく。

世界のトップ人材が集う「知のスタジオ」。学びの中心に「実践」と「共創」。

教育の現場には、デザイン分野の先駆者や、東京大学が誇る各分野の研究者、さらには実務家まで、多様な教員陣が集結する予定だ。学びの中心となるのは「スタジオ」と呼ばれる空間であり、ここを拠点に学生同士や学外の人々と交わることで、共創の力を引き出す設計となっている。
初年度は全寮制を導入し、学びと生活の一体化を図る。アカデミックアドバイザーの配置や、海外との交換留学、AIを活用した学修支援環境など、国際的な教育スタンダードを意識した支援体制も整備される。
こうした環境のもと、育成されるのは、社会のさまざまなセクターで課題解決に挑む次世代のリーダーたちだ。新しい政策やサービスの設計、新たなビジネスモデルの創出など、修了生の活躍の場は多岐にわたるだろう。

学部長予定者はRCA出身の国際派デザイナー、マイルス・ペニントン氏。

UTokyo College of Designの学部長には、東京大学大学院情報学環の教授であり、DLXデザインラボのディレクターを務めるマイルス・ペニントン氏が就任する予定だ。
英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)でイノベーション・デザイン・エンジニアリング(IDE)を修了後、RCAにて教授・学科長として活躍。Global Innovation Design (GID) 学科の設立者でもあり、イギリスと日本の教育・デザイン界をまたぐ国際的なキャリアを持つ。2017年からは東京大学で後進育成に携わり、現在に至る。
ペニントン氏の参画により、UTokyo College of Designは、単なる学部ではなく、国際的な「知の交差点」としての存在感を強めていくだろう。

マイルス・ペニントン氏

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