パルシステム生活協同組合連合会が、2000年に制定した「食料・農業政策」を全面改定した。気候変動や生産人口の減少など、国内外の食料環境が大きく揺らぐ中、生産者と消費者が共に「責任ある生活者」として持続可能な食料システムに取り組む姿勢を明確に打ち出した。新たな政策は、地域資源の循環活用や食料自給率の向上、地域づくりまでを包括する構造となっている。

命を支える食料にこそ持続可能性を。「4つの柱」で再構築された基本方針。

今回の改定で打ち出された新たな「食料・農業政策」は、「食料安全保障」「持続可能な生産と消費」「食の安全と安心」「食を通じた地域づくり」の4項目を基本方針としている。これらの方針は、単なる食料調達の手段としての農業ではなく、地域社会や自然環境と共生する持続可能な営みとしての農業を再定義する内容となっている。
パルシステムが初めて食料・農業政策を策定したのは2000年。以来、同会は産直を軸に生産者と消費者のパートナーシップを構築してきた。しかし、この25年で状況は一変した。食料自給率は40%を下回ったまま回復せず、農業従事者の高齢化と担い手不足が進行。加えて気候変動や国際的な地政学リスクの高まりも、食料の安定供給を脅かしている。
こうした背景を踏まえ、改定された政策では「食料は命そのもの」との認識に立ち返り、改めて国内農業の維持と回復を社会全体の課題として位置づけた。

地域資源を生かし、生態系と共に育つ農業へ。

新方針の核となるのは「持続可能な生産と消費」である。地域の森・里・川・海の恵みを活用し、農畜水産業を地域循環型に転換することを強く打ち出した。具体的には、環境保全型農業の推進や、生物多様性に配慮した栽培技術の導入、資源・エネルギー使用量の削減など、現場に根差した取り組みの継続と拡大を促している。
また、肥料や飼料、種子といった基幹資材の国産化にも重点を置き、食料自給率の向上と合わせて、輸入依存からの脱却を図る。消費の側面でも、環境に配慮した生産物を積極的に選び、無駄なく消費する「責任ある購買行動」が求められている。

食と農から未来を耕す。地域とつながる生協の使命とは?

さらに、農薬や品種改良技術といった新たな科学技術の利用については、倫理的観点からの議論を重視し、影響を慎重に見極めた上での導入を促す。単に技術を受け入れるのではなく、自然と調和した生産活動を維持し、周囲の生態系への影響を最小限にとどめる姿勢が貫かれている。
「食を通じた地域づくり」もまた、パルシステムの存在意義と直結する。産直事業を通じて築かれてきた生産者と消費者のつながりは、地域の経済活動を支えると同時に、豊かな食文化の継承にも寄与してきた。今後はこのつながりをさらに強化し、地域行政や教育機関とも連携することで、学校給食を活用した食育や、食のセーフティネットづくりにも踏み出していく。
改定された政策は、単なる指針ではなく、パルシステムが果たすべき「社会的責任の実行計画」として位置づけられる。13会員・173万人を超える組合員のネットワークを基盤に、地域から食料問題の解決に挑む姿勢が、改めて鮮明になった。

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