森村SOFCテクノロジー株式会社は、SOFC(固体酸化物形燃料電池)を用いた高効率・小型のモノジェネレーション型発電システムを開発した。発電効率は業界トップクラスの65%を実現し、水素混合による運転にも対応。すでに実証機が稼働を開始しており、将来的には家庭用・可搬型市場への展開とともに、来るべき水素社会に向けたキーテクノロジーとして注目が集まっている。

高出力と小型化を両立、災害時にも対応。“発電だけ”に特化したシンプルなシステム設計。
新システムの最大の特徴は、「モノジェネレーション型」である点だ。コージェネレーション(発電と排熱の併用)とは異なり、本機は発電のみに特化しており、熱回収機能を持たない分、構造はシンプルでコンパクト。セルスタックの軽量化技術と高出力密度を両立することで、家庭用や可搬型市場でも導入しやすい設計となっている。
発電効率は業界でも最高水準の65%に達しており、省エネルギー性能の高さも際立つ。壁面設置が可能なほどの小型サイズで、狭小地や集合住宅にも導入が可能。施工性の高さと低コスト化の両面で、既存の家庭用燃料電池とは一線を画している。
また、燃料面でも柔軟性を持ち、プロパンガスなど多様な燃料に対応。災害時やオフグリッド環境でも活用できることから、BCP(事業継続計画)用途や非常時の電源確保にも適している。
水素混合運転にも対応、環境対応型エネルギー機器としてのチカラ。
このSOFCシステムは、将来的な水素社会への移行を視野に入れて開発されているため、都市ガスと水素を混合しての運転が可能で、現在は水素混合による実証運転を進行中だ。都市インフラが水素に対応していく未来において、本機がいち早く対応できることは、環境対応型エネルギー機器としての大きなアドバンテージといえるだろう。
第一号機となるプロトタイプは、森村グループの一員である日本特殊陶業の小牧工場にある施設「SUISO no MORIhub」内に設置され、すでに稼働を開始している。今後は実証の場を拡大し、2027年度の商品化を目指す計画だ。

森村グループの結集が生んだ技術力、次のエネルギー標準を見据える。
森村SOFCテクノロジーは、ノリタケ、TOTO、日本ガイシ、日本特殊陶業、森村商事の5社による合弁会社として2019年に設立された。各社が持つセラミック技術を結集し、SOFCのセルスタック開発を中心とした研究・製造体制を築いてきた。
同社はすでに2021年から業務・産業用の燃料電池システムを量産化しており、今回の新システムはその知見を家庭用や可搬型用途にまで展開した成果といえる。今後は蓄電池や既存給湯器との接続など、多様なエネルギー機器との連携によるシステム統合も視野に入れている。
持続可能な社会の実現に向けて、森村SOFCテクノロジーは今後もSOFCの安定供給と普及拡大に取り組む。高効率・小型・環境対応という三拍子を兼ね備えた本システムは、次世代の家庭や産業を支える“新しいエネルギー標準”となる可能性も秘めている。