シャープ株式会社は、暑熱対策に有効とされる「アイススラリー」を市販のペットボトル飲料から簡単に生成できる冷蔵庫を開発した。2025年5月22日より、法人向けにレンタルサービスを開始する。この製品は、現場作業員やアスリートの熱中症対策として注目を集めており、さまざまな使用環境での導入が期待されている。

多様な飲料に対応し、熱中症予防の「プレクーリング」にも貢献。
近年、猛暑の影響で屋外労働やスポーツ現場における暑熱対策の重要性が増している。厚生労働省も企業に対し、暑熱リスクへの対応を義務化するなど、対策の強化が進む中、シャープが開発した「アイススラリー冷蔵庫」への関心が高まっている。
アイススラリーとは、微細な氷粒と液体が混合した半凍結状態の飲料で、摂取することで体内の深部温度を効率的に下げる効果があるとされる。飲料を過冷却状態に保ち、振動などの衝撃を加えることで簡単に生成できるのが特徴である。
本製品は、市販のペットボトル飲料を使用し、冷蔵庫内で飲料を過冷却状態に維持することにより、飲用直前にボトルを振るだけでアイススラリー化が可能となる。独自のファン制御技術と風路設計によって、飲料への冷風の直撃を避け、温度ムラを抑える工夫が施されている。
飲料の成分によって最適な冷却温度が異なる点にも対応するため、本製品では9段階の温度設定が可能となっている。スポーツドリンク、果汁飲料、コーヒー飲料など、幅広い製品のスラリー生成に対応しており、専用飲料を必要としない柔軟性も評価されている。
産業医科大学の堀江正知副学長は「作業前や休憩中にアイススラリーを摂取するプレクーリングは、体の深部温度を下げ、熱中症予防に寄与する」と指摘する。同大学では、シャープと連携し、暑熱下での作業環境における体温変化の研究にも取り組んでいる。
製品は高さ77センチ、重量27キログラムのコンパクト設計で、宅配便による搬送も可能。工場、建設現場、スポーツ施設のほか、屋外イベントや一時的な遠征先など、設置場所を選ばず活用できる。
レンタル期間は2カ月から5カ月まで対応し、価格は個別見積もりとなる。高温環境下で働く人々の健康とパフォーマンスを守るツールとして、同製品の普及が進むか注目される。