東京・日本橋で新たな都市再生のプロジェクトが動き出した。「日本橋リバーウォーク」と名づけられたこのエリアでは、首都高速道路日本橋区間の地下化と連動し、幅約100メートル・長さ1,200メートルにわたる親水空間が誕生する。高架橋が姿を消したことで空と川が再びつながり、江戸時代以来、人と水が共にあった日本橋の原風景がよみがえる構想だ。

地域、行政、民間が連携する「川にひらかれた都市空間」。

日本橋リバーウォークは、5つの再開発区域とその周辺一帯から成る。いずれも首都高の地下化と一体的に進められ、周囲の景観や機能を大きく刷新する。これまで首都高が覆っていた日本橋川は、再び陽光を取り戻し、緑と水に囲まれた都市空間へと生まれ変わる。川沿いには遊歩道やテラス、広場が整備され、水辺と都市の境界を取り払った風景が広がる予定である。
この取り組みを支えるのが、今年4月に設立された「一般社団法人日本橋リバーウォークエリアマネジメント」だ。再開発を担う各事業者と地域が連携し、新たなまちの価値を発信していく。情報発信拠点「VISTA」も開設され、模型や映像を通じてプロジェクトの全貌を可視化する役割を担う。

景観・環境・交通の再構築が導く「東京の新しい顔」。

このエリアで掲げる重点課題は、単なる再開発にとどまらない。景観形成や水辺の環境再生、交通機能の向上、国際都市としての進化、地域のイノベーション、そして文化・産業の多様性が、相互に絡み合う都市構想として進行している。
たとえば、八重洲一丁目北地区ではオフィス、ホテル、商業施設が集積し、国際的なビジネスの交流拠点として整備される。日本橋室町一丁目地区では、ライフサイエンスを軸とした施設が予定され、水辺に面した商業施設とともににぎわいを創出する。さらに、日本橋一丁目中地区には大型ホールやホテルも整備される計画で、都市機能と水辺空間が融合した景観が実現する見通しだ。

60年ぶりの空と川の再会、2040年に向けた未来図。

1964年の東京オリンピックを前に建設された首都高日本橋区間は、老朽化とともに、その存在が景観や地域の発展にとって課題となっていた。およそ10万台が通行する幹線の機能を維持しつつ、都市景観を再構築するという難題に対し、地下化という手段が選ばれた。
地下ルートの開通は2035年度、高架橋の完全撤去は2040年を予定している。地下にトンネルを整備し、上空に残る高架構造物を順次撤去することで、都市はかつての自然と接続される。青空の下に広がる親水空間が、日本橋の街並みに新たな記憶を刻むことになる。
日本橋リバーウォークの完成は、都市再生の到達点ではなく、始まりでもある。歴史と未来が交差するこの地で、東京は再び“水都”としての姿を取り戻そうとしている。

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