京セラとJR東日本スマートロジスティクスは、食物アレルギーに対応した食事宅配サービス「matoil(マトイル)」のお弁当を、東京駅構内の冷蔵ロッカーで受け取れるサービスを本格的に開始した。好評だった実証実験を経て、2025年6月24日から正式にスタート。旅行や出張で食事に制約のあった人々の利便性を高め、駅を起点とした「食のインクルージョン」を推進するモデルとして注目を集める。

旅行者の隠れた課題、アレルギーを持つ人々の「食の壁」。

旅行の楽しみの一つでもある食事。しかし、食物アレルギーを持つ人々やその家族にとって、外出先での食事選びは常に緊張を強いられる大きな課題。特に多くの人が利用するターミナル駅では、駅弁や惣菜の選択肢は豊富に見えるものの、特定のアレルゲン不使用の商品を見つけることは容易ではない。原材料表示を一つひとつ確認する手間や、コンタミネーション(意図しないアレルゲンの混入)への懸念から、安心して購入できるものは極端に限られるのが実情。結局、食べられるものが見つからず、長時間の移動を空腹のまま過ごしたり、安全のために自宅から重い食事を持参したりするケースも少なくない。

事前予約と非対面ロッカーが生む「安心」と「時間的価値」。

今回の新サービスは、こうした課題をテクノロジーの力で解決する。京セラの社内スタートアップ制度から生まれた「matoil」は、アレルギー当事者の声をもとに、個別のアレルゲンに対応した料理を製造・提供する専門サービス。利用者はこの「matoil」の公式サイトで事前にお弁当を注文・決済しておく。そして指定した日時に、東京駅グランスタ地下北口改札近くに設置された冷蔵機能付きロッカー「マルチエキューブ」で、好きなタイミングで商品を受け取る仕組み。ロッカーでの受け取りは完全非対面で、駅の混雑にも左右されないため、新幹線の乗り換え時など限られた時間でもスムーズに利用できる。アレルギー対応専門工房で作られた「安心」と、駅で探す手間をなくす「利便性」を両立させ、利用者に新たな時間的価値を提供する。

冷蔵対応のマルチエキューブ
お弁当の受け取りフロー

利用者の声が後押し、オープンイノベーションで実現した本格導入。

このサービスは、2024年10月から半年間にわたる実証実験を経て本格導入に至った。実験の利用者からは「また利用したい」「今後も継続してほしい」といった好意的な声が多数寄せられ、サービスの高い需要と社会的意義が確認された。今回の協業は、企業間の連携を促進するオープンイノベーションプラットフォーム「Tokyo Marunouchi Innovation Platform (TMIP) 」を介して実現したもので、大企業のリソースとスタートアップの機動力を組み合わせた新規事業創出の好例ともいえる。京セラとJR東日本スマートロジスティクスは、この東京駅での成功を足掛かりに、今後はアレルギー対応以外の多様な食のニーズ(ベジタリアン、ハラルなど)への対応も視野に入れ、サービスの拡充を目指す。駅という公共空間から、誰もが食事の不安なく移動できる社会の実現を後押ししていく。

受け取りロッカーはJR東京駅グランスタ地下北口改札近く

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