阪神電気鉄道株式会社、神戸高速鉄道株式会社、アサヒ飲料株式会社は、脱炭素社会の実現に向けた新たな取り組みとして、「CO2を食べる自販機」を阪神本線・神戸高速線の主要9駅に設置した。これは、自動販売機自体が大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、資源として再利用する国内初の試み。日常の風景に溶け込む自販機が、地球の未来を変える一助となるかもしれない。

なぜ「駅」に? 鉄道会社が進めるエコな沿線づくり。

鉄道はもともとエネルギー効率の高い輸送手段だが、阪神電鉄はそれに留まらず、省エネ車両の導入や駅への太陽光パネル設置など、環境保全活動を積極的に推進してきた。今回の自販機設置もその一環。大阪梅田駅や甲子園駅、神戸三宮駅といった多くの人が利用する主要駅にあえて設置することで、通勤・通学やレジャーで駅を訪れる人々に、脱炭素の取り組みを身近に感じてもらう狙いがある。また、甲子園球場に隣接する「ゼロカーボンベースボールパーク」にも6台が設置され、スポーツの場においても環境意識の発信を行う。

自販機がスギの木20本分働く、驚きのCO2吸収技術。

この自動販売機の最大の特徴は、機内にCO2を吸収する特殊な素材を搭載している点。この吸収材が、まるで呼吸をするかのように大気中のCO2を効率的に吸着する。その能力は、1台あたり年間でスギの木(樹齢56~60年)約20本分の吸収量に相当し、自販機が稼働するために排出するCO2の最大20%を相殺できるという。この画期的な技術はアサヒ飲料が特許を取得済みで、CO2濃度が高いとされる屋内施設などを中心に、関東・関西エリアですでに約1,500台の設置実績を持つ。

「食べた」CO2はどこへ行く?未来の資源循環モデル。

吸収したCO2は、ごみとして処分しない。回収された吸収材からCO2を分離し、様々な工業原料として活用する「CO2資源循環モデル」が構築されている。例えば、コンクリートやアスファルトの原料に配合することで、CO2を素材内に長期間にわたり固定化。また、海中の藻場造成に活用し、海洋生態系によるCO2吸収(ブルーカーボン)を促進する計画も進行中だ。アサヒ飲料の「100 YEARS GIFT」という活動の一環でもあるこの取り組みは、大気中から吸収したCO2を社会インフラや自然環境の再生に役立てる、まさにサーキュラーエコノミーを体現するものといえる。

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