石川県加賀市の全中学校・義務教育学校(後期)で、100%植物性のアイス「エクリプスコ(ストロベリー)」が9月19日に給食提供された。提供者はエクリプス・フーズ・ジャパン。牛乳・卵・ナッツ・大豆などアレルギー特定原材料等28品目を不使用。乳アイス比で製造時CO₂排出量を約65%削減するという。食物アレルギーへの配慮と、学校現場からの脱炭素アクション。小さく見えて、次へつながる社会実装だ。

学校給食にプラントベース。アレルギー配慮とCO₂削減、両立の設計。何が変わる?
給食は“みんなが同じものを食べる”前提で運用されてきた。だが現実は多様化。アレルギー、宗教、嗜好、健康・環境の価値観…、一皿で全部を満たすのは難しい。そこで登場するのが、動物性原料を使わないプラントベース食品だ。
今回の提供対象は加賀市内6校・計1,415人。教室で「同じ時間に同じおやつを楽しめる」体験を担保しつつ、アレルギー配慮と環境面の学びも同時に届ける。給食は栄養補給だけでなく、価値観を育てる“社会の教科書”。プラントベース導入は、その新しいページになり得る。
「エクリプスコ」は乳、卵、ナッツ、大豆など28品目を使わない設計。乳糖不耐や重複アレルギーの児童生徒にも配慮できる。一方で気になるのが味や食感だが、同社は植物素材で“乳のクリーミーさ”に近い口当たりを再現したとする。
環境面では、乳アイス製造と比べCO₂を約65%削減(同社公表値)。食品のライフサイクル排出を下げる手段として、原料転換は効果が大きい。給食という大量・定期の場に入ることで、削減効果は“チリも積もれば”の規模へスケールする。
行政×企業の連携。地域から始める社会実装。
今回の提供は、加賀市とエクリプス・フーズ・ジャパンの包括連携協定に基づく取り組み。自治体が現場(学校)を持ち、企業がプロダクトとノウハウを持つ。両者が組むことで、単発のキャンペーンではなく“試して改善する”サイクルが生まれる。
給食は予算や調達、設備の制約が大きい現場だ。だからこそ、一度現物を通す実証が効く。反応、ロジ、人手、保管、提供手順――課題は可視化され、次の改善につながる。地域発の小さな成功は、周辺自治体や民間給食への横展開の火種になる。
欧米では学校給食や病院食でのプラントベース選択肢が当たり前になりつつある。背景は気候危機と畜産由来の排出、そして多様性への配慮だ。日本は食の安全・品質で強みがある一方、選択肢の“幅”では遅れがち。
今回の一歩は、味・コスト・運用・学びのバランスをどこまで取れるかの試金石。子どもたちに「おいしい」「一緒に食べられる」「地球にもやさしい」を同時に届けられるなら、給食のアップデートは現実解になる。
フードの脱炭素とインクルーシブ化は、日常に入って初めて広がる。給食という“毎日”に、アレルギー配慮とCO₂削減を両立する選択肢を差し込んだ意義は大きい。次は、栄養・嗜好のばらつきにどう対応するか、価格と調達安定性をどう確保するか。地域の知恵と企業の技術の出番だ。

情報源:
エクリプス・フーズ・ジャパン プレスリリース(提供対象人数1,415人、28品目不使用、乳由来比CO₂約65%削減などの数値)
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