
★要点
大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME」で、amu×ZERI JAPANが廃漁網由来生地amuca®のスタッフ用トートとテグス再生サングラスを実装し、QRタグで由来を“その場で追える”仕組みを採用。
★背景
日本の海岸漂着ごみの59.5%が漁業関連(環境省・2024年)で、世界では年間約800万トンが海へ流出(国連資料)——流出前の回収と再資源化を加速すべき局面。
廃漁網アップサイクルが、循環と文化を一体で見せる段階に入った。amuがZERI JAPANと共同で、大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME」スタッフ用トートを開発。回収漁具由来のamuca®にQRタグを載せ、素材の出所から工程までを現場で共有する。海洋ごみの“数字”を、使い手の“行動”へつなぐ実装だ。
「数字」と「現場」をつなぐ──59.5%の海ごみ、廃漁網アップサイクルの必然。
海洋ごみは現場の手触りがなければ動かない。環境省(2024年把握)によれば、日本の海岸に漂着するプラスチックごみは質量で59.5%が漁業関連。国連関連資料では、世界全体で年間約800万トンが海へ流出するとされる。漁具は塩分・汚泥付着や異素材混在でリサイクル障壁が高く、焼却・埋立に流れやすい。しかも処分費は漁業者負担になりやすい構造だ。
そこで効くのが廃漁網アップサイクルの一気通貫。回収→分別→洗浄→再生材化→製品化を束ね、流出前の“元栓”を締める。同時に買い取りスキームで現場コストを緩和。理念発信に留めず、実需が生じる調達の場で運用する。万博の共同開発はその実証と言える。来場者の多い現場で、製品を媒介に課題の可視化と参加を両立する設計だ。
万博で検証する“語れる製品”──amuca®が拓くトレーサビリティと文化意匠。
amuとZERI JAPANは、スタッフ用トートの布地にamuca®(廃漁網アップサイクル生地)を全面採用。付属のamuca®タグ(QR)で回収地域・再資源化プロセス・協働の背景まで即時トレースできる。製品が教材になる構図だ。
意匠は港町・気仙沼の「出船送り」。航海の安全と大漁を祈る風景をモチーフに、資源×文化の視点を加える。さらに、廃マグロ用テグス由来のサングラスも寄贈。フレーム樹脂にamuca® PAを60%使用し、福井・鯖江の一貫生産で審美性と耐久性を両立した。
来場者動線を考えると、パネル説明より“語れる製品”の継続効果は大きい。スタッフの対話が信頼形成を促し、来場者の投稿がSNS拡散を後押しする。廃漁網アップサイクルは技術にとどまらない。使うほど学びが深まる仕掛けが鍵だ。


次の実装ポイント──調達基準・規格化・教育連携で広げる市場。
“点”を“面”に広げるには三つの策がいる。
第一に調達の明文化。 自治体・企業は入札・購買要件に、再生材含有率/回収地と工程のトレーサビリティ/長期使用を促す設計要件を記載する。ノベルティ、制服、館内什器、イベント配布物など置換可能領域は広い。
第二に規格化。 再生材の機械特性・色差・耐候性を用途別に標準化し、ロット管理で安定供給を担保。将来的にはEPR(拡大生産者責任)を見据え、漁具設計段階から単一素材化・回収性を織り込む。アップサイクルを“後付けの努力”にしない設計が重要だ。
第三に教育連携。 amuca®タグのようなQRは、学校・科学館・企業研修でも活用できる。配って終わりではなく、「測る→学ぶ→使い続ける」をプログラム化。万博で得た運用知見を公開し、横展開のガイドに落とすことが次の市場を呼ぶ。万博はショーケースではない。調達・規格・教育の実務体系へ昇華できるかが勝負どころだ。

amu|企業情報 https://www.amu.co.jp/
amuca®ブランド https://amuca.world/
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