★ここが重要!

★要点
大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の誕生を描く絵本『ミャクミャクと… ミャクミャク誕生ものがたり』(作・絵=山下浩平/フェリシモ出版)が予約開始。全編描き下ろし、図録とポストカード3枚付き、税込2,200円。作者本人による初の公式ライセンス商品。
★背景
会期終盤のいま、巨大イベントの記憶とレガシーは“何で残すか”が問われる段階。デザインの思考過程まで可視化した一冊は、キャラクター消費に終わらせない「文化のアーカイブ」としての意味を持つ。

フィナーレが近づくほど、起点を確かめたくなる。大阪・関西万博の象徴「ミャクミャク」に、作者が自ら物語を与えた。『ミャクミャクと… ミャクミャク誕生ものがたり』は、細胞の一滴から世界の色と形に出会い、想像し、変化し、共生していく歩みを追う。図録でデザインの道筋まで読み解ける“設計図としての絵本”。閉幕後も残る、最初の物語。

作者が手渡す“起点”——未発表原稿をほぼそのまま刊行。

本作は、ミャクミャクのデザイナーであり絵本作家でもある山下浩平が、2022年冬から23年春に私的に描いた“誕生の設計図”を基礎にする。未完成の熱量を損なわないため、加筆を最小限にとどめたという。36ページ・正方形判(210mm角)。本編に加え、着想から形になるまでの過程を解説する図録、描き下ろしポストカード3枚を同梱。デザインガイドやプロフィール設定、着ぐるみ設計にまで携わった作者ならではの一次情報が、読み物として束ねられた。フェリシモ出版から税込2,200円で予約販売中(2025年9月24日受付開始/©Expo 2025)。

“消費”で終わらせない——プロセスを残すというレガシー。

キャラクターの熱狂は、イベントが終わると沈む。その先に何が残るか。今回の一冊は、完成品ではなく「過程」を併走させる構成だ。発想→試作→調整の履歴を図録で開示し、作者の視点と言葉で解像度を上げる。これはグッズではなく、アーカイブ。誰が、何を選び、どこで躊躇し、どう折り合ったか。制作の意思決定が読者の手に残る。“奇妙”と評された初見の違和感が、読み解きの楽しさへと裏返る体験設計である。

閉幕18日前の刊行意図——別れではなく継承へ。

プレスリリースは「閉幕まであと18日」と強調した。最後に届いた、最初の物語。別れの代わりに、起源を共有する提案だ。SNS上で積み上がった“好きになっていった過程”を、作品側が受け止める。子どもは色と形の変化に目を奪われ、大人はコンセプトの連なりを追う。同じページを違う速度で読める構造は、家庭の本棚に長く残る条件でもある。販売はフェリシモの特設WEBで開始、今後順次拡大予定。

モノからコトへ——“図録付き絵本”が拓く読み方。

造本はシンプルだが、読み方は多層だ。まずは物語として通読。二度目は図録で制作の裏側に潜る。三度目は子どもと対話しながら、ページの色や形の由来を探す。読み返すたびに意味が増える設計は、キャラクターの寿命を伸ばす。イベントの出口で“思い出”に砂時計を置くのではなく、入り口に“再読”の扉を増やす。そんな文化の残し方である。イベントの最中に“後世に残す版”を手配する、その意味も味わいたい。

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