
★要点
茨城県つくば市の夫婦ユニット「futashiba248」が、農業廃棄物を染料化する独自技法「農color」と手漉き和紙、ニッチフレグランスを融合した体験型ショップをオープン。古民家を舞台に、地域資源の新たな価値を創造する。
★背景
フードロスや廃棄物問題が地球規模で深刻化する中、地域資源を活用したアップサイクルと持続可能なものづくりへの関心が高まる。地方創生と環境保全を両立する、体験型観光とクラフト文化の融合モデルとして注目される。
捨てられるはずだったブドウの枝葉が、鮮やかな色となってストールを彩る。古民家の土壁に、ほのかに香る和紙が揺れる。茨城県つくば市に誕生した「futashiba248」は、単なるショップではない。関将史さんと関裕子さんの夫婦ユニットが、農業廃棄物を「色」に変える独自技法「農color」を核に、手漉き和紙、そして「香り」を組み合わせた、五感を刺激する体験型空間だ。地域資源を循環させ、そこに物語と価値を吹き込む、夫婦ユニットの挑戦が今、静かに始まっている。
「農color」が拓く、新たな色彩経済
「futashiba248」の独自性は、廃棄される農作物の葉、木枝、果皮などを染料として再生する「農color」にある。単に染色するだけでなく、「どの農産物、どの地域から生まれた色なのか」を明記し、農家や地域の物語を色として紡ぎ出すアプローチが特徴だ。これは、現代社会が抱えるフードロス問題に対し、単なるリサイクルに留まらない、高付加価値なアップサイクルという解決策を提示している。消費者は、製品を手に取ることで、その裏にある生産者の顔や地域の風景、そして環境への配慮という物語を感じ取れる。


古民家で織りなす。五感のハーモニー
つくば市の古民家をリノベーションした店舗は、その空間性自体が体験の一部となる。ここでは、手作業による染色、茨城の伝統文化である手漉き和紙(西ノ内紙)、そして新たに導入されたニッチフレグランスが融合し、「色・手触り・香り・自然の音・季節の味」が連動する五感体験を提供。ブルーベリーの実を煮出した後の残渣を和紙の原料に混ぜ込むなど、素材の循環を視覚と触覚で感じられる工夫も凝らされている。訪れる人々は、単にモノを買うだけでなく、「体験そのものを持ち帰る」という新しいクラフトの価値を見出すだろう。


地域資源が育む多様なコラボレーション
futashiba248の制作体制は、地域素材を活用した商品開発から、教育、観光、アート、企業とのアップサイクル企画まで多岐にわたる。G7茨城水戸内務・安全担当大臣会合の記念品制作や、ホテル・建築の空間演出、さらには子ども向けの食育・環境学習まで、その可能性は無限大だ。農業廃棄物という「課題素材」を、クラフトやデザインへと拡張する柔軟性が、他にはないコラボレーションを生み出す原動力となっている。これは、地方の小さな事業者が、地域資源を軸に幅広い分野で影響力を持ち得ることを示唆する。


「消費」から「共創」へ、未来型ショップの姿
現代の消費者は、単に製品の機能性だけでなく、その背景にあるストーリーや社会貢献性を重視する傾向にある。futashiba248が提供する「クラフト染色セッション」や「センス オブ ペーパー」のような体験プログラムは、顧客を単なる購入者ではなく、クリエイティブな「共創者」へと変える。自ら手を動かし、世界に一つだけの作品を作り上げる過程は、所有する喜びだけでなく、持続可能な社会への参加意識を育む。
ニッチフレグランスの導入は、嗅覚という新たな要素を加えることで、体験の深みを一層増した。茨城県初となる取り扱いは、地方のショップが先端的なライフスタイルを提案できる可能性も示す。この夫婦ユニットが、古民家というローカルな拠点を起点に、グローバルなサステナビリティと地域活性化を繋ぐハブとなる日は近いだろう。


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