
★要点
大阪府とEarth hacksなどの民間企業が連携し、使用済み衣類の地域共創型サーキュラーエコノミー構築を目指す「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」が設立された。環境省のモデル実証事業として2年連続で採択されており、回収から再資源化までを一気通貫で行う、全国に先駆けた産官民連携モデルとなる。
★背景
日本の衣類廃棄量は年間約50万トンにのぼり、その多くが焼却・埋め立て処分されている。資源循環と脱炭素が急務となる中、これまで個々の企業努力に留まりがちだった衣類回収の取り組みを、地域全体でシステム化し、経済合理性のある「産業」へと昇華させることが、国レベルでの課題となっている。
もう、「捨てない」は当たり前。その先へ。大阪を舞台に、産官民が一体となって使用済み衣類のサーキュラーエコノミーを実現するための「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」が、本格的に始動した。これは、環境省のモデル実証事業を土台に、回収、選別、再利用、再資源化までを一気通貫で設計する野心的な試み。ファッションの都・大阪から、日本の「服の循環」の新しいかたちが生まれようとしている。
目標は8,000トン。個の力を束ねる「プラットフォーム」という発想
協議会が掲げる目標は明確だ。2030年度までに、大阪府下で焼却・埋め立てされる使用済み衣類を年間8,000トン削減し、同量以上を回収する。そして、そのうち3,500トンを国内でリユース・リサイクルする。 この壮大な目標を達成するため、協議会は「プラットフォーム」という形をとる。小売業者が回収の「つなぎ役」となり、運搬業者、選別・リサイクル技術を持つ専門企業、そして行政がそれぞれの強みを持ち寄り、連携する。これまで個々の企業や自治体でバラバラに行われがちだった衣類回収の取り組みを、サプライチェーン全体で最適化し、スケールメリットを追求する。一企業では難しい資金調達も、コンソーシアムを組むことで容易にする構想だ。


鍵は「トレーサビリティ」と「デカボスコア®︎」
ただ回収するだけでは、持続可能な循環は生まれない。協議会が重視するのは、回収された服が「どこへ行き、何に生まれ変わったか」を追跡できる、透明性の高いシステムの構築だ。トレーサビリティを確保し、「循環の価値」を可視化することで、再生素材を用いた製品の高付加価値取引を実現する。 そのための武器の一つが、Earth hacksが提供するCO2削減貢献量可視化ツール「デカボスコア®︎」。2024年度の実証では回収量4,932kgを達成。デカボスコア®での可視化結果として、27,209→648(kgCO2e)と示された。こうした客観的なデータを示すことが、生活者の行動変容を促し、企業が環境対応をアピールする上での強力な根拠となる。
大阪から関西、そして全国へ。未来の市場をつくるために
この協議会の最終的なゴールは、希少性が高まる再生繊維に、会員が優先的かつ安価にアクセスできる「新しい市場」を創出することにある。そのためには、省庁との連携による政策提言や規制緩和、そして何より、生活者が「循環」という価値を理解し、サステナブルファッションを積極的に選ぶ文化の醸成が不可欠だ。 協議会は、大阪での成功モデルを、いずれは関西全域、そして全国へと展開していくビジョンを描く。ファッションを楽しみながら、誰もが当たり前に資源循環に参加できる社会。そのためのインフラづくりが、大阪の地から始まった。
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