★ここが重要!

★要点
理化学研究所の研究チーム微生物材料開発室(JCM)が、保有する約6,700株の微生物の遺伝情報を網羅的に解析し、CO2を取り込む仕組みを持つ可能性のある微生物を約300株も発見。そのうち半数以上は、これまでCO2を利用することが知られていなかった未知の能力を持つ微生物だった。
★背景
カーボンニュートラル実現に向け、CO2を資源として活用する「バイオものづくり」への期待が高まっている。しかし、その主役となる高性能な微生物の探索は、これまで手探りの状態に近かった。ゲノム解析技術の進化が、微生物という“ブラックボックス”を開け、地球の炭素循環の理解と産業利用を、一気に加速させようとしている。

地球の未来を救う鍵は、私たちの足元、土や水の中に眠っているのかもしれない。理化学研究所(理研)が、微生物というミクロの世界で、壮大な宝探しを成功させた。約6,700もの微生物の遺伝情報をくまなく探索し、CO2を“食べる”能力を秘めた未知の微生物を大量に発見。地球の炭素循環の謎を解き明かし、CO2を資源に変える「バイオものづくり」の未来を拓く、画期的な成果だ。

ゲノム情報という“地図”を手に、CO2固定微生物を探す

地球上の炭素循環の約95%を担う、CO2固定の仕組み「カルビン・ベンソン回路」。理研の研究チームは、この回路に関わる遺伝子セットを“目印”に、世界最大級の微生物コレクションの中から、CO2固定能力を持つ可能性のある微生物を網羅的に探索した。 その結果、6,749株のうち、306株もの微生物がこの遺伝子セットを持つことを突き止めた。さらに驚くべきは、過去の文献と照合したところ、そのうち半数以上の株が、これまでCO2を利用するとは全く知られていなかった、未知のポテンシャルを秘めた微生物だったことだ。遺伝情報という“地図”が、これまで見過ごされてきた宝の在処を、次々と指し示した。

JCM微生物資源を基盤としたCO2固定候補株の探索

ルビスコの“個性”と生息環境を紐解く

CO2固定の中心的な役割を担う酵素「ルビスコ」には、複数の型がある。研究チームは、どの型のルビスコを持つ微生物が、どのような環境に生息し、どのようなエネルギー源を利用するのかを、遺伝情報と過去の培養データを統合して体系化した。 その結果、ルビスコの型によって、生息環境が大きく異なることが明らかになった。例えば、ある型は海洋や陸上に多く、また別の型は植物と共生する環境に強く結びついている、といった具合だ。この知見は、特定の環境問題(例:海洋のCO2吸収)を解決したい場合に、どのタイプの微生物が有効かを予測する上で、重要な指針となる。

JCM微生物コレクション株におけるCO2固定能力の体系的整理

「バイオ-ものづくり」の主役候補たち

この研究成果は、学術的な発見に留まらない。CO2を資源として、プラスチックや燃料といった有用な物質を生産する「バイオものづくり」の分野に、新たな主役候補を多数提供するものだ。 研究チームは、今回発見された未知の能力を持つ微生物について、ゲノム情報からその働きを予測。多くが水素や硫黄化合物を利用してCO2を固定する能力を持つ可能性を示した。石油などの化石資源に依存しない、環境調和型のものづくりを実現するための、具体的な設計図がここにある。 微生物が持つ多様なCO2固定戦略を理解し、その力を最大限に引き出す。理研が築いたこの研究基盤は、低炭素社会の実現に向けた、日本の大きな強みとなるだろう。

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