★ここが重要!

★要点
JEPLANの再生原料「HELIX™」が、コーセーの複数ブランドの化粧品プラスチックボトルに採用され、対象製品がブランドサイトで公開された。化粧品容器に必要な品質を、再生材で満たす動きが具体化してきた。
★背景
世界ではプラスチック規制・循環設計が一段と強まり、欧州では包装の再使用・リサイクル性を押し上げる規則整備が進む一方、国際的な“包括ルール”づくり(プラスチック条約)は綱引きが続く。企業側は「回収できる仕組み」と「再生材の品質」を同時に示せるかが問われている。

プラスチックの問題は、もはや「ごみの分別」だけでは終わらない。気候変動、資源制約、そして国際ルールの再編。いま起きているのは、素材の“出口”を先に決める経営判断だ。JEPLANの再生原料「HELIX™」がコーセーの化粧品ボトルに採用され、採用品目が公開された。主役は技術に見える。だが、真の勝負どころは別にある——回収と品質の両立、そして循環を「当たり前」にする設計思想だ。

“化粧品の容器”は難度が高い。だから象徴になる

化粧品ボトルは、リサイクルを語るうえで厄介な存在だ。色、デザイン、ポンプや複合素材、香料や内容物の残り。見栄えと機能が優先され、素材としては「混ざりやすい」。その結果、再生材を入れようとしても品質が揺れる。ここでHELIX™が持ち出すのは、使用済みPETを分子レベルまで分解し、不純物や色素を取り除くという“ケミカルリサイクル”の発想である。石油由来PETと同等品質をうたい、化粧品容器のような高い基準にも適用できるという。
象徴的なのは、採用品目を「見える化」した点だ。再生材の採用は、ともすればスローガンで終わる。だが品目が開示されれば、生活者も流通も“選べる”。企業も後戻りしづらい。循環は、宣言ではなくリストで始まる。

循環のボトルネックは“技術の外側”にある。回収網、設計、台帳

ケミカルリサイクルが魔法の杖かと言えば、そうではない。循環のボトルネックは、むしろ技術の外側にある。第一に回収だ。原料が集まらなければ循環は回らない。第二に設計だ。リサイクルしやすい単一素材、剥がせるラベル、分解しやすいポンプ。第三に台帳=トレーサビリティ。何が、どこから来て、どこへ戻るのか。
ここは世界共通の宿題でもある。欧州では包装の削減・再使用・リサイクル性を高める枠組みが整備され、企業は「設計の説明責任」を避けられなくなる。 日本でもプラスチック資源循環の制度が動き、自治体や事業者に設計・回収の実装が求められている。
つまり再生材は、単体で完結しない。回収と設計と情報が一本につながったとき、初めて「再生材の価値」が立つ。

“脱炭素”は素材の選び方に降りてきた。CO₂と信頼の二重帳簿

プラスチックは気候問題でもある。化石燃料由来の樹脂をどれだけ減らし、再生材比率をどう上げるか。各社が数字を掲げるほど、根拠の透明性が問われる時代になった。国際的にもプラスチック汚染対策の交渉は続くが、合意形成は簡単ではない。
だからこそ企業は、消費者に向けた“信頼の二重帳簿”を作る必要がある。
一つはCO₂。もう一つは循環の実態(回収量、再生材の比率、品質、用途)。HELIX™のように高品質用途へ再生材を戻せるなら、サイクルの価値は上がる。ただし、エネルギー投入や回収インフラの実装まで含めて「どこまで減るのか」を語れるかが、次の焦点になる。

“きれいに捨てられる”から“戻せる”へ

このニュースが示すのは、化粧品の容器が「きれいに捨てられる」段階を越え、「戻せる」段階へ移る可能性だ。やるべきことは明快で、難しい。
・回収の入口を増やす(店頭回収、自治体回収との接続、インセンティブ)
・分解しやすい容器設計へ寄せる(ポンプ、ラベル、着色の最適化)
・再生材を“プレミアム用途”に戻し続ける(品質と供給の安定)
循環は、生活者の倫理だけに背負わせられない。企業の設計と回収の仕組みが前に出る必要がある。化粧品ボトルは、毎日手に取る小さなプロダクトだ。その小ささが、社会を変えるには十分な大きさでもある。

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