★ここが重要!

★要点
UPDATERが展開する再生可能エネルギー100%の電力サービス「みんな電力」は、インフルエンサーの村山千夏さんをアンバサダーに起用した。狙いは、再エネを「難しい環境行動」から「推しや地域を応援する楽しい選択」へ変えること。若年層に向け、電気を選ぶ行為を“社会参加”として広げる。
★背景
再エネへの関心は高まっている一方で、生活者にとって電力切り替えはまだ心理的ハードルが高い。価格、手続き、仕組みの分かりにくさが壁になる。脱炭素を広げるには、制度や技術だけでなく、「共感」「楽しさ」「応援したい」という感情の導線が必要になっている。

電気は、長く“裏側のインフラ”だった。
スイッチを押せばつく。コンセントに挿せば動く。どこで、誰が、どんな思いで発電しているのかを意識する機会は少なかった。
その電気を、“推し活”のように選ぶ。
みんな電力が打ち出したのは、再エネ普及の少し意外な入り口だ。
UPDATERが展開する「みんな電力」は、村山千夏さんをアンバサダーに起用し、若い世代に向けて「電気を選ぶことが、地域や誰かの応援につながる」という価値を伝えていく。脱炭素を正論だけで広げる時代は、曲がり角に来ている。次に必要なのは、選びたくなる理由だ。

再エネは“正しい”だけでは広がらない

気候変動やSDGsへの関心は高まっている。だが、関心があることと、実際に電力を切り替えることの間には距離がある。
再生可能エネルギーは、生活者にとって分かりにくい。
どこで発電されたのか。
本当に環境に良いのか。
料金は高くならないのか。
手続きは面倒ではないのか。
この不安が、行動を止める。
みんな電力は、そこに「顔の見える電力」というコンセプトを置いてきた。発電事業者の思いや背景を見せ、電気を無色透明のインフラから、選べるストーリーへ変える。今回のアンバサダー起用は、その延長線上にある。
再エネを「勉強しなければ選べないもの」から、「応援したいから選ぶもの」へ。
行動変容の入り口を、知識から共感へ移す試みである。

“推し活”としての電気——応援1件が毎月100円の支援になる

みんな電力の特徴は、個人ユーザーが発電所やプロジェクトを“応援”できる仕組みにある。応援1件ごとに、みんな電力の負担で毎月100円が発電事業者や関連プロジェクトの支援に充てられる。利用者に追加負担はない。
ここが面白い。
電気を選ぶ行為が、単なる契約変更ではなく、誰かを応援する行為に変わる。
農家、地域の自然、再エネ発電所、地域プロジェクト。
電気の向こう側に人と場所が見える。
“推し活”という言葉は軽く聞こえるかもしれない。だが、社会実装においては、この軽さが重要だ。
脱炭素を「未来のために我慢しよう」と言われても、続かない。
一方で、「この地域を応援したい」「この発電所を選びたい」と思えれば、電力契約は日常の意思表示になる。
消費は投票だ、とよく言われる。
みんな電力の仕組みは、その投票用紙に“推し”の名前を書けるようにする。

Scope3時代の処理委託——“捨て先”ではなく“削減パートナー”へ

企業にとって、廃棄物処理の意味も変わる。
これまで処理委託は、法令順守とコスト管理の対象だった。もちろん、それは今も重要だ。しかしScope3の時代には、廃棄物がどこでどう扱われるかが、企業の排出量やESG評価に関わってくる。
石坂産業は今回のモデルについて、取引先にとって「Scope3削減実績の具体化」「地域貢献ストーリーの構築」「ESG評価向上」「将来規制リスクへの備え」につながるとしている。
ここに大きな変化がある。
廃棄物を安く処理するだけなら、企業価値は上がらない。だが、再資源化率が高く、CO₂削減効果が見え、資源の流れが追跡できる処理先を選べば、それは企業の脱炭素戦略の一部になる。
“どこに捨てるか”ではない。
“誰と循環させるか”である。
静脈産業は、企業のサステナビリティ担当者にとって、重要なパートナーへ変わり始めている。

Z世代に届けるには、“自分ごと化”の翻訳がいる

村山千夏さんは、TikTokとInstagramで合計80万人以上のフォロワーを持つZ世代の発信者だ。UPDATERは、村山さんが気候変動やSDGsに関心を持ち、同世代に対して共感性のある発信ができる点を起用理由に挙げている。
ここで重要なのは、再エネの説明を専門用語から生活の言葉へ翻訳することだ。
非化石証書。
CO2排出係数。
再エネ100%。
電力トレーサビリティ。
どれも大切だが、そのままでは届きにくい。若い世代に限らず、多くの生活者は、電力制度を理解したいのではなく、「自分の選択が何につながるのか」を知りたい。
電気を変えると、何が変わるのか。
どの地域を応援できるのか。
どんな発電所があるのか。
暮らしの中で無理なく続けられるのか。
アンバサダーの役割は、ここにある。
複雑な制度を、生活の実感に置き換えること。
難しい再エネを、選べるストーリーに変えること。

電気の“透明性”は、次のエシカル消費になる

食品では、産地や生産者の顔が重視されるようになった。
ファッションでは、素材や労働環境が問われるようになった。
電気にも、同じ流れが来ている。
どこで作られた電気か。
どんな発電所なのか。
地域にどんな価値を返しているのか。
みんな電力は、こうした情報を見せることで、電気をエシカル消費の対象に変えようとしている。
これは、再エネ普及の次の段階だ。
企業や自治体が再エネを導入する動きはすでに広がっている。Maintainableでも、浪江町が地域エネルギー会社を設立し、町内公共施設を再エネ100%電力へ切り替えた取り組みを紹介している。
一方で、家庭の電気はまだ見えにくい。電力会社を選ぶ機会はあるが、その選択が社会とどう結びつくのかは伝わりにくい。
だからこそ、「顔の見える電力」は効く。
再エネを、抽象的な環境価値から、具体的な応援先へ変えるからだ。

脱炭素は“設備”だけでなく、“気分”でも進む

脱炭素には、太陽光や風力、蓄電池、送電網、PPA、非化石証書といった技術や制度が欠かせない。だが、それだけでは社会は動かない。
人が選ぶ理由がいる。
続けたくなる感覚がいる。
話したくなる入口がいる。
JERAとセ・リーグが「灯セ、みんなで。」を通じて、野球ファンの熱狂を脱炭素の行動へつなげようとしているように、エネルギーの世界でも“参加体験”の設計が重要になっている。
みんな電力のアンバサダー施策も同じ方向を向いている。脱炭素を説教にしない。再エネを、難しい制度説明だけで終わらせない。推し活、地域応援、エシカルな暮らしという言葉で、日常に差し込む。
社会は、正しさだけでは変わらない。
楽しい、応援したい、参加している気がする。
その感覚が、行動を広げる。

電気を選ぶことは、暮らしの意思表示になる

これからの電力サービスに問われるのは、安さだけではない。
どこから来た電気か。
どんな発電所を支えるのか。
地域に何を返すのか。
自分の暮らしが、どんな未来に投票しているのか。
みんな電力が村山千夏さんを起用した狙いは、ここにある。若い世代に再エネを届けるには、環境問題を遠くの大義にしないことだ。スマホで見る。発信で知る。発電所を訪れる。電力を切り替える。自分の暮らしと地続きにする。
再エネは、もう企業や行政だけのテーマではない。
家庭の電気も、選べる時代に入っている。
電気を“推す”。
少し軽いその言葉の中に、脱炭素を広げるヒントがある。

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