築50年のビルを再生した「RENOVERU TOKYO OFFICE」
★ここが重要!

★要点
リノベるは、2026年5月22日から24日まで、東京建築祭2026の参加プログラムとして、表参道の本社オフィス「RENOVERU TOKYO OFFICE」を特別公開する。築50年のビルを再生した空間に、アップサイクルアート展示、廃材を使ったランプづくり、骨董通りの蚤の市を組み合わせ、“活かし継ぐ”建築と暮らしを体験できる3日間を開く。
★背景
建築費の高騰、資材不足、脱炭素圧力、都市ストックの老朽化。日本の都市は、古い建物を壊して新築するだけでは回らなくなっている。既存建物を長く使い、廃材や古道具に価値を見出し、空間を更新し続けるリノベーションは、環境負荷と経済合理性をつなぐ都市更新の現実解になりつつある。

都市には、まだ使える建物が無数にある。
古いから壊す。狭いから建て替える。使いにくいから捨てる。そんな判断の積み重ねが、建築廃材とCO2を生み続けてきた。
表参道の一角にあるリノベるの本社オフィス「RENOVERU TOKYO OFFICE」は、その逆を行く。築50年のビルを再生し、働く場として使い続ける。東京建築祭2026では、その空間を開き、アップサイクルアート、廃材ランプづくり、骨董通りの蚤の市まで展開する。
建物を残すだけでは足りない。
使い、直し、語り、次の人へ渡す。
リノベーションが描く循環の思想を、表参道で体感する3日間である。

築50年のオフィスを開く——ストック活用を“見える体験”にする

東京建築祭2026は、「建築から、ひとを感じる、まちを知る。」を掲げる建築体験イベントだ。2026年は渋谷エリアも加わり、参加建築は過去最多の151件。普段は入りにくい建築の内部や背景に触れられる都市の祭典である。
その中でリノベるが公開するのが、南青山の「RENOVERU TOKYO OFFICE」。築50年のビルを再生したオフィスで、特別公開は5月23日、24日の10時から17時まで。会場は東京都港区南青山5-4-35、表参道駅から徒歩圏にある。
この公開の面白さは、完成した“おしゃれなオフィス”を見せるだけにとどまらない点にある。
古い建物をどう読み替えたのか。
働く場をどう再構成したのか。
まちとの接点をどうつくったのか。
リノベーションは図面や数値だけでは伝わりにくい。空間に立ち、光や素材や動線を感じて初めて、ストック活用の意味が見えてくる。
建築を見学することは、都市の使い方を学ぶことでもある。

これからの働く場の在り方を探る実験的なオフィス

スクラップ&ビルドの先へ——建物を長く使うことの環境価値

建築業界では、建物の「つくる・つかう・こわす」全工程における環境負荷を測るLCAへの関心が高まっている。リノベるは、既存建物を長寿命化し、活用し続けるリノベーションが、新築に比べてCO2排出量や廃棄物を抑えられる手法だと説明している。
この視点は、いまの都市に欠かせない。
建築の脱炭素は、運用時の電気や空調だけでは語れない。建材の製造、輸送、施工、解体で発生する炭素も重い。さらに、建物を壊せば廃棄物が出る。新築すれば、新たな資材が必要になる。
だからこそ、既存ストックを活かす選択が意味を持つ。
もちろん、すべての建物を残せばよいわけではない。耐震性、安全性、用途、快適性、コスト。超えるべき条件は多い。だが、壊す前に活かせる余地を探ることは、都市の基本姿勢としてもっと重く扱われていい。
リノベーションは、懐古ではない。
都市の資源を読み直す技術である。

“働く意味”を空間で試す——Crossing fieldという実験場

RENOVERU TOKYO OFFICEのコンセプトは「Crossing field」。東京建築祭の紹介では、9つのアクティビティを誘発する設計により、「オフィスで働く意味」を具現化した実験的な場とされている。竣工年は1972年、改修は2020年。改修設計にはリノベる、SCAPE、ライティングMが関わった。
オフィスの価値は、コロナ禍以降、大きく揺れた。
出社する意味は何か。
オンラインで済む仕事と、同じ場所に集まる意味はどう違うのか。
働く場は、席を並べる箱でよいのか。
築古ビルを再生したオフィスは、その問いに対する実験装置でもある。
新築の均質なオフィスではなく、既存建物の履歴を引き受けながら、働き方を再設計する。古い躯体に、新しい活動を入れる。そこに、都市のストックを使う面白さがある。
建築は、働き方の器であり、組織の思想を映すメディアでもある。

廃材が灯りになる——アップサイクルアートが示す価値の反転

今回のプログラムでは、Pimlico Arts Japanによるアップサイクルアートの展示とワークショップも開かれる。海洋プラスチックごみや廃材、コロナ禍で使われていたアクリルパーテーションなどを使い、世界に一つだけのオリジナルランプをつくる内容だ。
廃材は、見方を変えると素材になる。
傷、色ムラ、欠け、古さ。大量生産では避けられがちな要素が、作品では表情になる。
ここに、リノベーションとの共通点がある。
古い建物も、廃材も、古道具も、一度は「価値が下がったもの」と見なされる。だが、手を入れ、文脈を変え、使い方を変えれば、別の価値が立ち上がる。
アップサイクルアートは、その転換を小さなスケールで体験させる。
都市の循環は、大規模な制度だけでは進まない。
手を動かして、素材の見え方が変わる瞬間がいる。
“捨てるもの”が“欲しいもの”に変わる体験がいる。
ランプづくりは、その入口になる。

「Pimlico Arts Japan」によるワークショップの様子

蚤の市という都市の記憶装置——継承を前提にした買い物

「骨董通りの蚤の市」も、今回の重要なプログラムだ。ヴィンテージ雑貨や家具、アンティークラグ、古道具、オールドファブリック、ヴィンテージ陶器、コーヒーなど、多様な出店者が集まる。リノベるはこれを「継承を前提としたものとの出会いの場」と位置づけている。
新品を買うことは簡単だ。
だが、古いものを選ぶには、少しだけ想像力がいる。
誰が使っていたのか。
どこから来たのか。
どう手入れすればよいのか。
自分の暮らしにどう馴染むのか。
その想像力こそ、循環型の消費に必要なものだ。
蚤の市は、単なる物販ではない。都市の中でモノの寿命を延ばす仕組みである。家具や布や陶器が、次の持ち主へ渡る。使い捨てではなく、受け継ぐ。価格だけでは測れない価値が、そこに生まれる。
建物も同じだ。
壊さず、直し、次の用途へ渡す。
蚤の市とリノベーションは、同じ思想の上にある。

継承を前提としたものとの出会いの場「骨董通りの蚤の市」

リノベーションは“経済合理性”にも近づいている

リノベーションは、環境配慮だけで語られる段階を超えつつある。建築費の高騰、資材不足、人手不足が続く中、既存建物を活かすことは、経済合理性のある選択肢になってきた。
Maintainableでも、東急不動産らが組成した国内初の「再生建築ファンド」を紹介した。築40〜50年超のビルを、躯体活用や耐震・用途更新により100年超の資産へ再評価する取り組みである。新築比でCO2排出量や廃棄物量も大幅に削減したとされる。
この流れと、リノベるのイベントはつながっている。
再生建築は、感性だけでは広がらない。
投資できるか。
使い続けられるか。
維持管理できるか。
市場で評価されるか。
そこまで設計して初めて、建築ストックは都市の資産になる。
東京建築祭のような場で、一般の来場者が築古ビルの再生空間を体験する意味は大きい。市場を動かすのは、制度や金融だけではない。そこに行きたい、働きたい、使いたいという生活者の感覚もまた、再生建築の価値を押し上げる。

表参道で考える、都市を“使い続ける”技術

表参道は、流行が速く入れ替わる街だ。
新しい店舗、新しいブランド、新しい建物が次々に現れる。だからこそ、築50年のビルを使い続ける意味が際立つ。
都市は、更新されなければ停滞する。
だが、更新は必ずしも解体を意味しない。
古い建物に新しい用途を入れる。
廃材に新しい光を与える。
古道具を次の暮らしに渡す。
オフィスを働き方の実験場にする。
リノベるの3日間は、都市を“壊して変える”のではなく、“使いながら変える”ための小さな見本市だ。
建築祭という開かれた場でそれを見せることに意味がある。専門家だけの議論ではなく、生活者が見て、触れて、買って、歩いて、考える。循環は、理解より先に体験から始まることがある。
表参道の築古ビルが、その入口になる。

■施設・イベント情報
RENOVERU TOKYO OFFICE 特別公開
日時:2026年5月23日(土)・24日(日)10:00〜17:00
場所:RENOVERU TOKYO(東京都港区南青山5-4-35 たつむら青山ビル)
参加費:無料
予約:不要
公式情報:https://2026.kenchikusai.tokyo/program/17-07/

東京建築祭2026 関連プログラム
開催期間:2026年5月22日(金)〜24日(日)
内容:オフィス特別公開、アップサイクルアート展示、アップサイクルワークショップ、骨董通りの蚤の市
リノベる公式リリース:https://www.renoveru.jp/corporate/news/20260414

あわせて読みたい記事

【分解して移せる木造ビル】都市の“余白”を循環に変える——日本橋茅場町「prewood」の挑戦

【“壊さず稼ぐ”は成立するか】東急不動産が国内初の「再生建築ファンド」——築古ビルを100年資産へ変える、金融の新しい文法

未来の建築環境を変革するエクセルギーの可能性とは? 宿谷昌則名誉教授が新刊で提案する「人・建築・地球」の新時代