災害断水ストレスを軽減する完全循環型トイレ
トイレが快適に使えるのは、日頃の清掃はもちろんのこと、上下水道や電気などのインフラが整っているからだ。しかし停電や断水などでそのインフラが止まってしまうと、たちまちその限りではなくなる。
こうした問題点に着目し、オープンイノベーションを起こそうとしている会社がある。e6(s エシックス)の高波正充社長は、自社で開発している「インフラに依存しないトイレ洗浄水循環システム」についてこう話す。
「e6sは自宅や公共施設、仮設トイレなどさまざまなトイレに接続することができる装置です。普段は上下水道とつながっていますが、災害などの非常時は e6sシステムに切り替えができます。e6sシステムを使うと、トイレの洗浄水を使って排泄物を減容し、衛生的に安全に回収したあと、水タンクに戻り再利用することができます。インフラに依存しないとうたっている通り、約1週間もつ充電式のバッテリーのみで上下水道や電気がなくても快適にトイレを使い続けることができます」(以下の画像参照)
この画期的なシステムは、共同開発をしている日大工学部の中野教授の被災体験から生まれたのだという。
「中野教授が東日本大震災で被災し、トイレでたいへん困ったそうです。仮設トイレは汲み取り業者がくる前に溢れてしまい、臭いや汚れがひどい状態。このような状態になると、排泄を我慢したり、水分や食事を控えたりすることで健康を害し、災害関連死につながることもあります。こうしたことを減らすためにも、快適に使えるトイレは人間にとってなくてはならないものです。災害時以外にも世界にはインフラ設備が整っていない地域や、水が貴重な地域があり、そうした場所にもe6sを届けたいと思っています」
現在e6sは、大きさと使用回数が違う公共施設用と家庭用が開発されているが、実用化に向けてはさまざまな課題がある。
「我々はベンチャー企業なので、量産体制を整えることや消耗品交換時期の情報提供やデータ採取のネットワーク化などが課題です。コンビニや鉄道・高速道路事業者など、試験導入先としての伴走支援先も必要です。世界中で必要とされるトイレなので、たくさんの企業さんと協業してイノベーションを起こしたいと考えています」 震災・断水に備えるべき新発想のトイレに未来を。
Text Maki Sato