名古屋大学発のスタートアップ「クロスイー」が、これまで廃棄されていた有機資源を価値ある炭素材料(バイオマスカーボン)に変える独自の低温炭化プラント「Carbo-Pro」を開発した。この技術は、食品工場などから出る廃棄物の処理コストを大幅に削減し、CO2排出も抑制するため、循環型社会の実現に貢献する新技術として注目を集めている。

CO2排出を抑える低温炭化技術で、廃棄物処理の課題を解決。
食品廃棄物などの有機物が埋め立て処分されると、二酸化炭素の約25倍の温室効果を持つメタンガスが発生し、気候変動の一因となる。この課題に対し、クロスイーは革新的な解決策を提示した。
同社が開発した炭化プラント「Carbo-Pro」は、触媒を利用して200℃以下の低温で有機物を炭素に変化させる。従来、300~600℃の高温を必要とした一般的な炭化方法と違い、有害ガスやCO2の発生をほとんど伴わない点が大きな特徴だ。このため、法律上の焼却炉には該当せず、導入のハードルも低い。プラントを導入した事業者は、これまで1トンあたり約20,000円かかっていた産業廃棄物の処理費用を、電気代のみの約5,000円にまで削減できるという。
プラントによって生成されたバイオマスカーボンは、土壌改良材や燃料として有効活用できる。さらに、クロスイーはカーボン製品の専門企業と連携し、このバイオマスカーボンをより高機能な工業製品の材料として利用する研究も進めている。これは、海外からの輸入に依存するカーボン材料の安定供給に向けた新たな可能性を示すものだ。クロスイーの技術は、廃棄物を価値ある資源に変え、企業のコスト削減と環境負荷の低減を両立させる。この取り組みは、国内の資源循環と脱炭素社会の実現を加速させる力を持つだろう。