
★要点
経済産業省が、大阪・関西万博で開催した体験型催事「サーキュラーエコノミー研究所」において、施工資材の資源循環率99.7%という驚異的な数値を達成。レンタル品やリユース品を多用し、新規資材もリサイクル先を事前設計するなど、「作って・使って・壊す」からの脱却を具体的に示した。
★背景
オリンピックや万博のような大規模国際イベントでは、閉幕後に発生する大量の廃棄物が常に大きな社会課題となってきた。持続可能性が世界の共通言語となる中、「いかに華やかな祭典にするか」だけでなく、「いかに賢く後始末をするか」という循環型設計(サーキュラーデザイン)の視点が、イベントの成否を分ける新たな評価軸となっている。
祭りの後には、大量のゴミが残る。そんな当たり前は、もう過去のものになるかもしれない。大阪・関西万博で経済産業省が主催した「サーキュラーエコノミー研究所」は、イベントで使われた資材の99.7%を再利用・再資源化するという、驚異的な成果を叩き出した。「終わった後」から考えるのではなく、「始まる前」に循環をデザインする。未来のイベントの作り方を、身をもって示した格好だ。
設計思想の転換——「壊す」ではなく「還す」場所を先に決める
なぜ、99.7%という高い資源循環率が可能になったのか。その答えは、イベントの「設計思想」そのものにある。従来の「作って・使って・壊す」という直線的な発想を捨て、「資源をどう循環させるか」を起点にすべてを構築した。 具体的には、展示ブースの壁や床、什器といった施工資材の多くを、レンタル品や再利用可能なもので構成。新たに製作した資材についても、木材や金属といったマテリアルリサイクルしやすい単一素材を意図的に選定した。さらに、素材を選ぶ段階で「この木材は、イベント終了後に〇〇社の建材としてリサイクルする」というように、**資材の“行き先”を事前に決めておく**という、徹底した循環設計を導入。廃棄を前提としないイベント運営を、現実のものとしてみせた。

QRコードで追跡、「見える化」が循環の精度を高める
設計だけでなく、運用にも工夫を凝らした。催事の終了後、全ての資材を素材ごとに分別・計量。それぞれの資材にQRコードを付与し、回収から再資源化されるまでの全工程をデジタルで管理した。 このトレーサビリティシステムにより、どの資材が、どこで、どのように生まれ変わったのかを正確に追跡できる。「リユース」「マテリアルリサイクル」「焼却処理(エネルギー活用)」といった循環ルートを定量的に把握することで、感覚的な「エコ」ではなく、データに基づいた精度の高い資源循環管理を実現した。その結果が、目標値をも上回る99.7%という数字に繋がった。

ショーケースから、実装のモデルへ
今回の実証は、一般的なイベントと比較して、17.74トンものCO2排出量削減にも成功したという。これは、500mlペットボトル約1,740万本分に相当する体積だ。 もちろん、従来の設計フローを変更することによる作業工数の増加など、運用面での課題も見つかった。しかし、この取り組みで得られた知見は、今後のあらゆるイベント業界にとって、サーキュラーエコノミーを実装するための貴重なモデルケースとなるだろう。 約5.8万人が来場し、人気漫画「科学漫画サバイバル」シリーズとのコラボで循環経済を楽しく学んだこの研究所。その最大のレガシーは、展示内容そのものよりも、「捨てないイベントは、設計と思想で実現可能だ」という事実を、具体的な数字で証明したことにあるのかもしれない。

サーキュラーエコノミー(循環経済)に関するWebサイト
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/shigenjunkan/circular_economy/action/index.html
あわせて読みたい記事

【白州で“つくって、燃やす”水素循環】日本最大16MWのP2G、サントリー天然水・ウイスキーの熱源を水素に——「グリーン水素パーク -白州-」始動

【核融合実験最前線】三菱重工×QST、ITER「外側垂直ターゲット」初号機が完成——20MW/㎡級の熱に挑む日本の加工力

【東北大学×Nittobo】リサイクルが簡単な電極材料を開発!資源の制約を乗り越えた電池開発に新たな期待。
