NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、株式会社UACJ、東京工業大学と連携し、世界初の「縦型高速双ロール鋳造機」を開発した。この技術により、従来困難とされていたアルミニウムリサイクル材を用いた展伸材製造が実現する見込み。2024年10月から愛知県のUACJ R&Dセンターで稼働を開始する予定だ。

高品質なリサイクル材の量産化により、二酸化炭素(CO2)排出削減も期待

サーキュラーエコノミーが求められる現代において、アルミニウムは軽量でCO2排出削減に寄与する素材として、特に輸送機器分野での需要が高まっている。しかし、新地金の製造時には大量のCO2が排出されるため、再生地金の活用が重要視されていた。そこで、NEDOは2021年から「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」に取り組み、その一環として、UACJや東京工業大学と共に、リサイクル技術の開発を進めてきた。
従来の技術では、リサイクルされたアルミニウムに含まれる鉄やシリコンなどの不純物が、素材の特性を低下させる問題があり、リサイクル材を展伸材の製造に使用することは難しかった。今回開発された「縦型高速双ロール鋳造機」は、アルミ溶湯から直接薄板を高速で鋳造できるため、冷却速度が従来の数十倍に向上し、急速な凝固プロセスが可能となった。この技術により、不純物が微細化され、リサイクル材の品質が飛躍的に向上した。
このリサイクル材を用いてアルミニウム展伸材を量産化させ、2030年には高品質なリサイクル材の安定供給が見込まれている。また、同技術の活用により、業界全体で年間1800万トンのCO2排出削減が可能になるとされており、アルミニウムのリサイクルがより広範囲に普及し、サーキュラーエコノミー実現への大きな一歩となることが期待されている。
今後、本鋳造機の活用によって、アルミニウムリサイクル材の量産技術はさらに進化していくだろう。また、サーキュラーエコノミーの実現に向けた新たな技術として、他の素材分野にも応用可能な技術として期待されている。2050年までには、業界全体のCO2排出量をさらに削減し、持続可能な資源循環型社会の構築を目指す。

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