国立大学法人静岡大学発のベンチャー企業S-Bridges株式会社は、株式会社アイシン、アサヒ飲料株式会社など異業種7社と連携し、植物を余すことなく利活用する「Bio Material Transformation(BMT)」事業を本格始動させた。第一弾として、茶葉の全成分抽出を通じた製品開発に着手しており、タンパク質危機や食品廃棄問題といった社会課題の解決に向けた取り組みが始まっている。

植物全体を資源とするBMT、新たな価値創出のエコシステムを構築。

世界的な人口増加に伴う食糧需給の逼迫により、2050年には深刻なタンパク質危機が到来すると予測されている。これに対し、S-Bridges株式会社は、植物の全成分を分離・抽出して無駄なく利活用するBMT(Bio Material Transformation)事業を提唱。食料、繊維、化学など多様な業種との連携を通じ、循環型社会の実現に向けた新しい資源活用モデルの確立を目指している。
BMTでは、植物内部の細胞構造を酵素と湿式粉砕技術により分解し、これまで利用が難しかった成分も取り出す。例えば、飲料用の茶葉に含まれる成分は従来20%程度しか活用されていなかったが、この技術を用いることでタンパク質、食物繊維、ミネラルなどを含む全成分の抽出が可能となった。
この技術を核に、S-Bridgesと異業種6社が連携し「BMTチーム」が結成された。メンバーには、植物由来の食品開発を手掛けるカゴメ株式会社、分離・精製技術に強みを持つオルガノフードテック株式会社、抽出成分のアップサイクルを行うデンカ株式会社、繊維製品開発を進める帝人フロンティア株式会社などが名を連ねる。各社が持つ専門性を持ち寄ることで、新たなバリューチェーンの構築が進められている。
茶葉の全抽出技術は、食品だけでなく化学製品や繊維素材などにも応用可能で、植物資源の価値を最大化させる仕組みとして注目されている。すでにBMT静岡チームも立ち上がり、地域企業との連携を通じて地域資源の循環活用を模索している。
今回の取り組みは、国連が掲げるSDGs目標とも合致し、食品廃棄物の削減やカーボンニュートラルの推進にも貢献する。今後は茶葉にとどまらず、トマトの茎葉やその他の未利用植物資源へと対象を拡大し、サーキュラーエコノミーの社会実装を進めていく構えだ。
植物を基点とした新たな素材変換技術と産業連携は、持続可能な社会構築に向けた実践的な解決策として、さらなる発展が期待されている。

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