「ぬれてるし、ヌルヌルしてるし、ムシばっかり食べるし……」。そんなカエルくんの一言から始まる絵本『オレ、カエルやめるや』が、シリーズ累計10万部を突破した。子どもだけでなく大人の心もつかみ、多くの賞を受けてきたこの絵本。人気の背景には、陽気でユーモアに満ちた会話と、“自分でいていい”という深いメッセージがある。

“カエルやめたい”から始まる、自己肯定の物語。
ぬるぬるの自分をやめたいカエルくんが問いかける、
「ほんとうのじぶん」とは…?
絵本『オレ、カエルやめるや』(マイクロマガジン社)は、生意気でかわいいカエルくんと、そのお父さんとの掛け合いが楽しいユーモア絵本。シリーズ第1弾として2015年に刊行されて以来、親子の読み聞かせに絶大な支持を集め、2025年5月時点でシリーズ累計発行部数は10万部を突破した。
物語の主役は、自分がカエルであることに不満を抱く小さなカエルくん。「ヌルヌルしてるし、虫ばかり食べるし」と、自分の“いま”に納得がいかず、もっとかわいくてフサフサな動物になりたいと願う。そんなカエルくんに対して、お父さんカエルは陽気に、真剣に対話を重ねる。物語はふたりのユーモアあふれるやりとりを通して、「自分らしくあること」の意味をやさしく、そして深く伝えていく。
本作は第11回MOE絵本屋さん大賞や、第2回未来屋えほん大賞でも入賞。読売KODOMO新聞「本屋さんイチオシ」など、多数のメディアでも取り上げられ、子育て層を中心に話題を呼んだ。
また、リズムあるセリフと吹き出しを活用したスタイルにより、3歳前後の子どもでも“ひとり読み”が可能となるなど、読者の年齢層も広い。親子でキャラクターになりきって楽しむ読み聞かせ体験が、絵本の枠を超えた「共有する物語」として多くの家庭で支持されている。
文章は、映画製作の経験を持つデヴ・ペティ。絵を手がけたのは、カナダ在住のマイク・ボルト。そして翻訳を担当したのは、劇作家・パフォーマーとして知られる小林賢太郎。言葉と絵、そして訳の妙が見事に融合し、子どもも大人も「自分を好きになる」きっかけとなる一冊に仕上がっている。
シリーズはその後も続き、第2弾『オレ、おおきくなるのいや』、第3弾『オレ、なんにもしたくない』、第4弾『オレ、ねたくないからねない』へと展開。どの作品も「自分らしさ」をめぐるカエルくんの冒険を描いており、ユーモアのなかに、しなやかな自己肯定の哲学がにじむ。



社会が変化し、子どもも大人も“何者か”にならなければという焦燥に駆られるなかで、「自分でいていいんだ」と教えてくれるこのシリーズは、高く再評価されるべき絵本といえる。