玉川高島屋ショッピングセンター(東京都世田谷区)の屋上庭園「フォレストガーデン」「ローズガーデン」が、環境省の「自然共生サイト」に認定された。高島屋グループの施設が同制度に登録されるのは今回が初めてとなる。生物多様性の保全と都市の緑地再生が求められるなか、多摩川や国分寺崖線といった地域の自然とつながる緑のハブとしての役割が評価された。

多様な生きものが集う、4300㎡の“空中の自然”。

玉川高島屋S・Cの屋上には、約160種の植物が生育する庭園が広がる。合計4300㎡に及ぶこの空間は、訪れる人々に憩いをもたらすだけでなく、鳥や昆虫、小動物にとっても貴重な生息環境となっている。施設では、創業当初から植栽や環境教育に取り組んできた経緯があり、これらの継続的な努力が今回の認定につながった。
今回評価対象となったのは、生態系ネットワークの一部としての機能だけではない。施設内では、地域の自然と共に育つ価値を伝えるための環境学習も行われている。こうした活動は、都市部においても自然と人が共生できることを示す具体例となっている。
環境省が2023年度から開始した「自然共生サイト」制度は、国際目標「30by30」の達成に向けた取り組みの一つ。これは、2030年までに地球上の陸と海の30%以上を健全な生態系として保全するという国際的な目標だ。認定区域は国際データベース「OECMs」にも登録される予定で、国内外から注目される。
都市開発が進む一方で、自然環境の保全が課題となっている現代において、商業施設が果たす役割は小さくない。高島屋グループでは「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」を経営指針の一つに掲げ、CO2排出削減や自然災害への備えといった環境施策を推進している。
多摩川や崖線の自然と連なるこの屋上庭園は、単なる商業施設の付帯設備にとどまらない。都市と自然をつなぐインフラとして、また次世代への環境教育の場として、重要な役割を果たしている。今後も気候変動や生物多様性の危機が深まる中、民間主導の取り組みは極めて重要だ。
高島屋が試みる屋上から広がる緑のネットワークは、地域に根ざした生態系再生を後押しする装置であり、都市と自然を接続する大切なモデルケースの一つといえる。

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