愛媛県今治市が、「自転車通勤推進企業宣言プロジェクト」において「優良企業」に認定された。国土交通省が推進する本プロジェクトでは、全国13の企業・団体のうち、自治体としては2例目の快挙となる。市役所自らが先導役となって自転車通勤の普及を図る姿勢は、自転車を軸にしたまちづくりの象徴とも言える。

行政主導で進む「自転車通勤文化」自治体として全国2例目の認定。
「自転車通勤推進企業宣言プロジェクト」は、企業や自治体における自転車通勤・業務利用を支援し、持続可能な交通手段としての普及を後押しする制度だ。まずは「宣言企業」として、自転車通勤を認めたうえで駐輪場の整備、安全教育の実施、自転車保険への加入義務など3つの基準を満たす必要がある。
今治市はその基準を満たした上で、市役所職員に対してヘルメットの着用を義務付け、安全講習を定期的に実施するなど、先進的な取り組みを展開してきた。さらに、駐輪場を約500台分整備し、地元警察と連携した交通安全教育にも注力している。
こうした実績が評価され、全国で13団体目、自治体としては長野県松本市に次ぐ2例目の「優良企業」認定に至った。5月22日に都内で行われた表彰式では、国土交通大臣より認定証が授与された。

自転車を核としたまちづくり。広がる市民向け施策。
今治市は、しまなみ海道を有する“サイクリストの聖地”として国内外から注目を集めている。観光の枠を超え、自転車を基盤にした持続可能な都市計画を推進してきた。2020年に策定された「サイクルシティ推進計画」に基づき、市民生活に根ざした自転車の利活用を進めている。
具体的には、幼児・高齢者向けのヘルメット購入補助や、未就学児のいる家庭への自転車貸出、高校生による交通安全会議の開催、大学との連携による啓発キャンペーンなど、多角的な施策が展開されている。在住外国人を対象とした安全講座も行われ、幅広い層に向けた取り組みが進行中だ。
また、地元企業にも自転車通勤文化の浸透を働きかけ、駐輪場整備やヘルメット購入支援といった制度設計も進んでいる。行政によるリーダーシップが、地域全体への波及効果を生んでいる。
国際会議「Velo-city2027」開催へ 世界へ発信する今治モデル
2027年には、世界最大級の自転車国際会議「Velo-city」が愛媛県で開催される予定となっている。今治市にとっては、しまなみ海道の魅力を国際的に発信する絶好の機会となる。
市内では、今治駅としまなみ海道をつなぐ市道「北宝来近見線」において、自転車通行空間の整備が進められている。
この流れを受け、今治市では欧州の都市政策で注目される「SUMP(持続可能な都市モビリティ計画)」の理念を取り入れ、自転車を中心に据えた都市像の確立を図っている。今後はVelo-cityを契機として、観光や交通だけでなく、地域経済や市民の生活全体にまで及ぶサイクルシティの深化が期待されている。
