マンションという小さな街の可能性
マンションは一つの土地を大勢の人々で共同利用し、建物空間を区分所有する「小さな街」だ。このシェア空間に暮らす人々のコミュニティの在り方が、日本の共生社会が進化していく上で重要な役割を果たしていくことになるのかもしれない。
マンションにはさまざまな課題が存在している。居住者の高齢化はもとより、建物の老朽化、管理組合運営の担い手不足、修繕積立金不足、適切な修繕工事が行えないことによる建物の劣化進行など、まるで超高齢化日本社会の縮図そのもののようだ。
去る2月21日、一般社団法人マンション管理業協会主催による「マンションイノベーションフォーラム 2022」が開催された。このイベントでは管理組合や管理会社によるマンションマネジメント手法改善などの取り組み事例を表彰する「マンション・バリューアップ・アワード2022」の最終プレゼンテーション審査や、気象予報士の天達武史さんによる特別講演、パネルディスカッションなどが行われ、グランプリには長谷エコミュニティ社員の「ご近所見守り隊の設立~世代間の垣根を超えたマンション内コミュニティ~」が選ばれた。
IT・DX推進によるマンション管理組合の活性化や、高校生をはじめとした若者世代のマンションコミュニティ参画施策や話題も多く見られ、マンションという小社会が次世代の重要なコミュニケーションの場であり、高齢者を若者が守る世代融合の視点を持った行動の芽が生まれていることもわかった。異なる者たちが共存する共生社会の新たなモデルづくりを考えていく上で、多様な背景を持った人々が集まる集合住宅「マンション」は、優れた実証実験の場になる可能性を秘めている。
Illustration Rica Hayakawa Text Yasuo Matsumoto