山形県飯豊町の白川湖では、春の雪解け水が湖に流れ込むことで、約2ヶ月間だけ「水没林」という幻想的な景色が広がる。今年もこの貴重な景観を楽しむためのカヌーツアーが開幕する。さらに、観光と地域活性化を目的とした「水没林安全祈願祭」や気球イベントも開催予定だ。

春限定の絶景「水没林」とは?

白川湖は、日本百名山の一つである飯豊連峰からの雪解け水が大量に流れ込むことで、一時的に水位が上昇し、湖畔のシロヤナギの木々が水に浸かる「水没林」という特異な景観を生み出す。この現象が見られるのは、毎年3月下旬から5月中旬までのわずか2ヶ月間のみだ。
シーズン前半(3月下旬~4月中旬)には、芽吹く前のシロヤナギと湖岸の残雪が織りなす「白の水没林」が広がり、静寂に包まれる。一方、4月中旬から5月にかけては新緑が湖面に映え、川鳥のさえずりとともに「緑の水没林」を楽しむことができる。シーズンの終わりには湖の水位が徐々に下がり、木々は再び地上に姿を現す。

カヌーツアーと新たなアクティビティ

この春も、いいでカヌークラブが主催する「水没林カヌーツアー」が開催される。今年は新たな試みとして、より本格的な漕ぎ体験が楽しめる「カナディアンコース」が新設された。これにより、初心者だけでなく、経験者やリピーターも新たな魅力を感じられる内容となっている。
また、湖畔で開催される「気球フライト体験」も注目を集めている。気球からの眺めは、湖面に映る水没林を一望できる貴重な機会であり、シーズン中の毎週日曜日に実施予定だ。

地域と観光をつなぐ取り組み

白川湖の水没林は、近年SNSなどを通じて注目を集めるようになったが、地域全体の観光振興につなげるため、地元の取り組みも活発化している。その一環として、シーズン中の運営スタッフを全国から募る「おてつたび」プロジェクトが始動。参加者は白川湖周辺の宿泊施設に滞在しながら、観光案内やイベント運営に関わることで、地域とのつながりを深めることができる。
さらに、3月23日には白川湖を見守る数馬神社による「水没林安全祈願祭」が開催される。この神社はかつて湖畔にあったが、ダム建設に伴い移築された歴史を持つ。現在も地域のシンボルとして、水没林シーズンの安全を祈願する重要な役割を果たしている。
またこのような取り組みが評価され、白川湖の水没林を活用した観光プロジェクトは「スポーツ文化ツーリズムアワード2024」を受賞した。カヌーツアーを主軸とした持続可能な観光地づくりのモデルケースとしても注目されている。

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