サマーホリデーは一年の集大成

日照時間の短い厳しい冬を過ごすフィンランド人にとってサマーホリデーは絶対に必要な年中行事。冬は仕事の季節、夏はお休みの季節なのです。学校の夏休みが始まるのは6月初め、その後8月中旬に再開するまで2 カ月半は宿題もありません。親も子どもの休みに合わせてこの2 カ月半の中で最短でも2週間、通常は3 週間ほどサマーホリデーを取ります。海外旅行に出る家族も多いですが、湖畔のサマーコテージKesämökki(ケサモッキ)で過ごすのが一般的です。

フィンランドには50 万以上のサマーコテージがあると言われており、3 家族に1家族はサマーコテージを持っている計算です。現在は設備の整ったサマーコテージが多いのですが、今でも水も電気も通っていない昔ながらのシンプルなサマーコテージが一番贅沢だと言われています。現代的なアメニティーはありませんが自然の中で過ごすことが目的なのでそれで十分です。夏の間は金曜日の午後には仕事を切り上げて、サマーコテージで特に何もせず自然に身を任せて過ごすのが一般的です。

自由に魚釣りをしたり、森を散歩したり、ボートに乗ったりサウナに入ったり自由に過ごします。それによって都会生活や日常生活とのバランスを取るのです。ですので、フィンランドでは人がどこか余裕があり、ゆったりしています。北欧には自然享受権(Everyman’s right)という法律があり、誰でも自然の恵みを受ける権利があると考えられています。他人の迷惑にならない限り自然の中に入っていくことも、ブルーベリーなどの自然の恵を取ることも許されています。フィンランド人の子どもは小さな頃からサマーコテージを通して自然との共存を学んでいきます。環境をケアするサステナブルなライフスタイルはこんなところから生まれるのかもしれません。フィンランド人にとってみんなの財産である自然を守ることや地球の環境を考えることは当然のことなのです。

フィンランドデザインとサステナブル

北欧デザインは世界でも大人気で、今や日本でもすっかり定着しました。最大の特徴はそのシンプルなデザインと綺麗な色使いです。それは日本の侘び寂びにも通じるところがあり、和室に似合うデザインといえば北欧デザインです。なぜシンプルな方が良いかと言うと世代を超えて使うことができるからです。フィンランドでは祖父母の使った家具を塗り直して使うことは珍しいことではありません。また、シンプルなデザインならいつまでも飽きることがありません。耐久性も求められるので品質も良くなくてはならず、高価ですが世代を超えて使うので結局経済的です。

そのようなデザインは図書館や学校のような公共施設でも使われることが多く、フィンランドの子どもは小さな頃からフィンランドデザインに慣れ親しんでいます。また、マリメッコに代表される綺麗な色使いは冬の暗い時期にも映えるよう、白い冬景色に色合いを加えるのに役立っています。それはイッタラなどのガラスの食器にも表れています。

そんなテキスタイルデザイン、ガラスデザイン、家具デザインまで、よーく見るとモチーフになっているのは自然です。北欧デザインというと現代的とか幾何学模様をイメージされるかもしれませんが、フィンランドでは自然以外のモチーフを使うことは滅多にありません。作品名も自然から取っています。サステナブルな考え方はフィンランドデザインにも表れているのです。

フィンランド政府観光局が目指すサステナブルツーリズム

そんなフィンランドへの旅行をプロモーションしているのがフィンランド政府観光局(Visit Finland)です。サステナブルは現在一番の重要テーマです。観光客にも「フィンランドを旅する11のヒント」などを提供していますし、サステナブルトラベルフィンランドという認証制度を設けフィンランドの旅行業界にも貢献を求めています。ここで注目したいのが「全体的アプローチ」です。サステナブルというと自然や環境に関することに焦点が当たりがちですが実はそれは一部にしか過ぎません。サステナブルな社会や伝統、文化
、経済を目指しています。フィンランドの文化や自然に敬意を払って旅行してもらったり、地元の食材を使った料理を楽しんだり、地元のお土産を持ち帰ってもらうことも、地元の人々を雇用したりするのもサステナブルなのです。サステナブルトラベルとは旅人にも、地元の人々にも、自然にも、旅行を提供している旅行業界も幸せになる四良しなのです。

能登重好 Shigeyoshi Noto

Foresight Marketing CEO。大手旅行代理店勤務を経 て、1993年フィンランド政府観光局にマーケティングマ ネージャーとして入局、1996年より同日本局長。20年以上にわたりフィンランドのプロモーションに携わる。
2010年に株式会社Foresight Marketingを設立。