旭化成エレクトロニクス株式会社(本社:東京都千代田区)は、子会社であるセンスエア社と共に、強燃性冷媒であるR290(プロパン)の検出が可能なガスセンサー「Sunlight R290」を開発し、2024年9月から量産出荷を開始する。この製品は、特に欧州市場をターゲットにし、冷媒リークの高精度な検出を実現することを目指している。

R290冷媒の需要増加、規制強化で注目

冷媒市場において、欧州ではPFAS規制やフルオロカーボン類(Fガス)規制が進み、従来のR410AやR134aといったハイドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒から、環境負荷が少ない自然冷媒への切り替えが進行中だ。R290は、オゾン層破壊係数がゼロで、地球温暖化係数(GWP)も非常に低いことから、冷媒としての利用が急増している。
しかし、R290は可燃性が高く、万一冷媒が漏れた場合には燃焼や爆発のリスクがあるため、空調機器の安全性を確保するためには、冷媒リークをいち早く検出する技術が求められている。これに応じて、空調機器の安全規格であるIEC 60335-2-40 edition 7では、冷媒ガス漏れ検知機能の搭載が義務付けられている。
新製品「Sunlight R290」は、LED光源とフォトダイオードセンサーを使用した非分散型赤外線(NDIR)技術を採用。この技術により、センサー自体が発熱することがなく、強燃性のR290を使用する冷媒システムにおいても安全な運用が可能となった。
さらに、このガスセンサーは、振動や他のガスの干渉を受けにくく、高いロバスト性と信頼性を持つ。IEC 60335-2-40規格が求める厳しいリーク検知要求を満たすだけでなく、経年変化による検知性能の低下を自動で補正する「自己補正アルゴリズム(ABC)」も搭載している。この技術により、センサーのメンテナンス頻度を大幅に低減することが期待されている。
同製品は、パッケージエアコン、ルームエアコン、冷暖房製品、チラーユニット、除湿機、制御盤クーラーなど、幅広いアプリケーションでの利用を想定している。小型で低消費電力の設計により、設置場所を選ばず、様々な機器に柔軟に対応できる。
「Sunlight R290」の量産出荷が開始されることで、R290を使用する空調機器の安全性が向上し、欧州市場における自然冷媒の普及がさらに加速することが期待される。旭化成エレクトロニクスは、今後も環境負荷の低減と安全性の向上を目指し、新たな技術開発に注力する方針を示している。


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