エスカレーター清掃を少しでも省力化したい。
現場の熱い想いから生まれた「エスカモップ」
現在、国内では約7万台のエスカレーターが稼働している(※2023年3月現在。日本エレベーター協会調べ)。そのエスカレーターを安全清潔に利用いただくために、日夜清掃スタッフによるメンテナンスが行われている。
エスカレーターの清掃は複雑だ。まずはフラワーと呼ばれる乾燥モップで内側面と外側面の除塵を行う。次にインナーデッキ、アウターデッキと呼ばれる側面下のステンレス部分をモップ等で拭きあげる。そしてステップの溝の掃除、最後に手すりといった具合に、エスカレーターの大きさ等にもよるが1台のエスカレーターを清掃するのに、おおよそ30分程度の時間がかかる。
エスカレーターを稼働させながら清掃するケースも多く、身体への負担も大きい。このエスカレーター清掃に一手を投じたのが株式会社テラモトの「エスカモップ」だ。
JR東日本の100%子会社で、茨城、福島両県にわたって車両や駅の清掃などを手がけるJR水戸鉄道サービス株式会社が、テラモト製のFXライトブレードハンドルを加工して手作りのエスカレーター専用モップを製作したのが始まりだ。
このJR水戸鉄道サービスによる手作りモップのアイデアは「ビルクリーニングアイデアグッズ大賞」にも選出され、株式会社JR東日本環境アクセスとテラモトを加えた3社で本格的に開発が始まった。
羽田空港のような昼間の利用客が多い時間帯の清掃でも「エスカモップ」であれば、エスカレーターにワンタッチでセットするだけで通行の妨げを最小限におさえて清掃が可能だ。
こうして当初からの課題であった軽量化や、多種多様な規格があるエスカレーターの最大公約数的なサイズで調整できるよう開発された「エスカモップ」が、2023年夏、正式リリースされた。ラクに作業ができるとの声も多く、即導入に踏み切ったユーザーもいる。その中から「世界一美しい空港」羽田空港の清掃を手掛ける、日本空港テクノ株式会社に「エスカモップ」の使用感を聞いた。
「通常、エスカレーター清掃は利用客が少ない夜の作業なのですが、エスカモップであれば昼間に目立つ汚れがあった時にも稼働したまま少ない動きで清掃ができるので便利です。」と日本空港テクノ株式会社の鎌田 裕貴さん。「長いエスカレーターですと1本拭き上げるのに相当な体力を使いますが、これなら押さえているだけなのでかなりラクだと思います。」とも。同時に、「もう少し軽いと操作がしやすい」「固定部にぐらつきが生じる」などの改善点も語ってくれた。
株式会社テラモトによると「全国で沢山のデモを行い改善点も見えておりますので、改良を加え、より多くのユーザー様に喜んでいただける製品開発を進めていきます。」とのこと。まだ開発途上の「エスカモップ」ではあるが、ユーザーからの声を活かし、エスカレーター清掃の今後の省力化に大きく貢献できる可能性を秘めている。