AGCと東京建物は、東京建物八重洲ビルのステップテラスに、建材一体型太陽光発電ガラス「サンジュール®」を導入した。この取り組みは、環境省のBIPV(建材一体型太陽光発電設備)導入支援事業に初採択されただけでなく、日本規格協会による新JSA規格「S1024」に基づく初の認定案件となった。発電機能を持つガラスが都市建築の「窓」や「壁」として本格的に機能しはじめた。

窓から電力を生み出す時代へ。
都市型再エネ導入の新たな突破口。
気候変動による温暖化と電力需要の高まりは、都市部における再生可能エネルギーの自給自足という難題を突きつけている。特に高層ビルが林立する都心では、再エネ設備の設置スペースが限られることが課題とされてきた。
AGCの開発した「サンジュール®」は、こうした都市特有の制約を逆手に取った製品で、窓ガラスとしての機能を保ちながら、太陽光を受けて電力を生み出す“発電ガラス”だ。今回、この技術が東京建物八重洲ビルのステップテラスに導入され、都心型再エネ導入の現実解として注目を集めている。
導入された発電ガラスの定格出力は5.19kWに達し、建物の建築面積1,764.16㎡に対し「土地有効活用スコア(LUCF)」は2.9W/㎡を記録。これは、JSA規格S1024が定める「土地有効活用型PV設置建築物等」の基準を満たしており、同ビルはその第一号認定案件になった。
環境省が初採択、JSAが初認定。制度と市場が動き始めた。
今回の導入は、単なる設備更新にとどまらない。環境省が実施するBIPV導入支援制度において、「窓や壁と一体となった太陽光発電設備」として初めて正式に採択された事例であり、政策面からも今後の拡大が期待されている。
さらに、JSA(日本規格協会)が2025年3月に発効した規格「S1024」では、建物への太陽光パネル設置による土地有効活用の定量的評価が導入された。AGCが事務局を務め、東京建物が参加した規格開発グループの提案によって成立したものであり、建築物のESG評価や資産価値の新たな指標として注目されている。
「窓が電源になる」という新たなパラダイムは、再エネ導入を“設置場所の制限”という前提から解放するものであり、従来未活用だった都市空間のポテンシャルを再定義する動きにつながる。
建物がエネルギーを生み出す社会へ。
AGCと東京建物は、今回の導入を起点に、都心部のビルや施設への「サンジュール®」展開を拡大していく方針だ。都市の“空間”そのものを発電装置に変えるというこの発想は、エネルギーの自給自足、そしてカーボンニュートラルへの大きな布石となるだろう。
東京建物が掲げる「次世代デベロッパー」構想と、AGCの素材技術は、再エネ社会の実現を「まちづくり」の文脈に組み込む試みとも言える。都市の構造や景観に馴染む太陽光発電の導入が本格化すれば、環境性能だけでなく、経済的・社会的な価値創出も見込めるはずだ。その新たな一歩として、「サンジュール®」が今後、どれほど都市建築の標準装備となっていくか。興味深い取り組みだ。