熱の脱炭素化に取り組むベンチャー企業、株式会社Blossom Energyは、日本初となる黒鉛を用いた蓄熱電池「Blossom Energy G-TES」を開発した。このシステムは、再生可能エネルギーの余剰電力を高効率で熱に変換して蓄え、必要な時に温水や温風として安定供給する。2026年からの量産モデル販売を目指し、産業・業務部門のエネルギーコスト削減と脱炭素化を両立するソリューションとして期待を集める。

再エネの余剰電力を熱に変換、産業分野の脱炭素化とコスト削減を両立。
日本のエネルギー消費において、製造業などの産業分野が利用する熱エネルギーの脱炭素化は喫緊の課題となっている。多くの企業が老朽化した重油ボイラの更新時期を迎え、コストを抑えながら温室効果ガス排出量を削減するという難しい舵取りを迫られる。こうした状況下で、新たな解決策として注目されるのが「蓄熱電池」だ。
Blossom Energyが開発した「G-TES」は、この課題に応えるシステム。過去20年以上にわたり高温熱輸送システムの研究に携わってきた専門家が、エネルギーの貯蔵と供給に優れる黒鉛を蓄熱材に採用した。この新しいシステムでは、昼間などに発生する安価な再生可能エネルギーの余剰電力を熱として蓄積し、夜間や需要の高い時間帯に一定温度で安定的に供給する機能を確立した。商用モデルは小さなコンテナ1基ほどの大きさで、200〜600kWhの熱量を貯蔵可能。これは一般家庭約10〜30世帯分の1日の給湯需要に相当する。
同社は2025年夏から広島県内で実証試験を開始し、同年度中には複数のテストユーザーによる導入検証を進める計画。製造業の乾燥炉、食品加工、陸上養殖、温浴施設やビルの給湯・暖房など、幅広い分野での活用を見込む。変動する再生可能エネルギーを安定的かつ安価な熱源として利用可能にするこの技術は、日本の産業界が直面するエネルギー問題の解決に向けた大きな一歩となる。

