★ここが重要!

★要点
生搾りオレンジジュース自販機から出る大量の皮を、子ども向けの安全なクレヨンへとアップサイクル。IJOOZ株式会社、株式会社栄農人、mizuiro株式会社の3社協業で、「捨てない」循環モデルを具体化した。
★背景
世界的なフードロス問題と、資源価格高騰、気候変動。一次産業の持続可能性が揺らぐなか、“廃棄物”を教育資材に変える試みが実施された。

自販機の中で毎日搾られるオレンジ。その甘い一杯の裏側で、行き場を失う大量の皮がある。日本全国に広がる生搾りオレンジジューススタンド。その副産物が、子どもたちの手の中で“色”としてよみがえる。廃棄物か、資源か。分岐点は発想だった。

“もったいない”の再定義――都市型フードロスの盲点

世界では年間約13億トンの食品が廃棄されると言われる。問題は家庭や飲食店だけではない。都市のインフラとして広がる自動販売機もまた、見えないロスを抱える存在だ。
生搾りオレンジジュースを提供するIJOOZ株式会社は、世界34カ国で事業を展開しており、日本国内だけでも1650台以上を設置・運用している。1杯ごとに生まれるのは、オレンジの新鮮な果汁と、搾り終えた皮。これまでもクラフトコーラや酒、精油、飼料へと再活用してきたが、なお資源として活用できる可能性は残っていた。
その可能性を拾い上げたのが、「農業をもっと元気に」を掲げる株式会社栄農人だ。規格外野菜や端材と向き合ってきた同社が目を向けたのは、“子どもが使うもの”だった。

畑から机へ――色でつなぐ一次産業

完成したのは「畑で採れたクレヨン」。製造を担うのはmizuiro株式会社で、米ぬか由来の米油とライスワックスをベースに、規格外野菜や果物を微粉末化して配合する技術を持つ企業だ。
本商品の特徴は、「石油系原料を使わない」「食品着色と同等成分の顔料」「万一口に入れても安全な素材設計」の3つ。
今回、その“オレンジ色”を担うのが自販機から出る皮である。廃棄予定だった素材が、子どもの創造力を支える色になる。これこそまさに象徴的な転換で、農業は「きつい」「儲からない」というイメージに縛られがちだが、価値の再編集次第で一次産業の“食料供給者”だけでなく、“万能な資源の生産者”へと解釈し直せる。

アップサイクルは教育になる

SDGsが学校教育に組み込まれて久しい。だが依然として理念は抽象的になりやすく、教育現場ではまず、数字や目標よりも、直感的に学べる道具が必要だ。
子どもが握る一本のクレヨン。その背景に「ジュースの皮」があると知る体験。その時、子ども達の中で初めて、循環は概念ではなく具体になるだろう。
IJOOZ代表の堀木遼さんは、子育ての当事者としてこの意義を語る。自らの子どもが学校でSDGsを学ぶ世代であること。遊びながら自然を知る機会が、価値観を形づくること。企業のCSRを超え、次世代への投資としての側面がにじむ。

循環経済の“次の段階”

リサイクルは素材を元に戻す。アップサイクルは価値を上げる。だが本質はさらにその先の、廃棄物を「物語」に変えられるかどうかだ。
自販機という都市装置。農地という一次産業。保育園や学校、家庭という教育現場。それぞれの分断を一本のクレヨンがつなぐ。
気候危機が進み、資源価格は高止まりし、農業人口も減少してきている。従来の大量生産・大量廃棄モデルは明らかに揺らいでおり、今必要なのは「身近な副産物を、次の価値へ転写する視点」だ。

■販売情報
商品名:畑で採れたクレヨン
販売:八ヶ岳エナジーファーム ECショップ
https://energee.base.shop/

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