2025年に開催される大阪・関西万博では、持続可能な社会を目指す取り組みの一環として、会場の象徴ともなる「大屋根リング」の再活用が注目されている。建築家の藤本壮介氏が会場デザインプロデューサーを務めるこのプロジェクトでは、廃棄物削減と資源の有効活用を目指した新しいサーキュラーエコノミーの実現が試みられている。
画像提供:2025年日本国際博覧会協会
「大屋根リング」再活用と持続可能な社会の具現化
いよいよ来年4月に開幕する大阪・関西万博は、単なる展示会にとどまらない。脱炭素社会と循環型社会の形成を目的に、持続可能性を考慮した調達コードを策定。会期前、会期中、そして会期後までを視野に入れた長期的な取り組みが行われている。その象徴ともいえるのが「大屋根リング」の再活用だ。
この「大屋根リング」は、万博会場のランドマーク的な存在であり、大量の建材を使用して設計される。その建材を会期終了後に廃棄するのではなく、再利用する計画が立てられている。監修するのは、国内外で数々の受賞歴を持つ建築家・藤本壮介氏だ。藤本氏によれば「素材の再活用はもちろん、新たな創造的価値を付加することが大切だ」とこれまでに語っている。
12月9日に東京ミッドタウンで行われるイベントでは、このプロジェクトに関わるキーパーソンが集まり、再利用の具体策が議論される予定だ。登壇者には、藤本氏をはじめ、日本国際博覧会協会 企画局 持続可能性部 部長の永見靖氏、2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクターの齋藤精一氏が名を連ねる。
今回の議論の背景には、地球規模での環境問題への対応がある。建築資材の大量廃棄は温室効果ガスの増加に直結する一方で、資源循環の確立は持続可能な社会の基盤となるからだ。大阪・関西万博は、単なる未来技術発信の場ではなく、実際に社会課題を解決するための「実験の場」としての役割を果たすと考えられる。「大屋根リング」の再活用は、その一歩を示すプロジェクトであり、今後のサーキュラーエコノミーにおける新たな指針となる可能性を秘めていると言えるだろう。
【登壇者】
藤本壮介氏 藤本壮介建築設計事務所 主宰
1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では、2025年日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任。2024年には「(仮称)国際センター駅北地区複合施設基本設計業務委託」受注候補者に特定。
主な作品に、ブダペストのHouse of Music (2021年)、マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設(2021年)、白井屋ホテル(2020年)、L’ArbreBlanc (2019年)、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013(2013年)、House NA (2011年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館 (2010年)、House N (2008年) 等がある。
永見靖氏 日本国際博覧会協会 企画局 持続可能性部 部長
上智大学卒業後1996年に環境庁(当時)入庁、ドイツへの留学、資源エネルギー庁への出向(再生可能エネルギー担当)等を経て、環境省環境教育推進室長、四国経済産業局総務企画部長を歴任。2022年1月より現職。
齋藤精一氏 Panoramatiks 主宰/2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター/2024年度グッドデザイン賞審査委員
1975年神奈川県伊勢原市生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学ぶ。2006年に株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)を設立。社内アーキテクチャ部門を率いた後、2020年に「CREATIVE ACTION」をテーマに、行政や企業、個人を繋ぎ、地域デザイン、観光、DXなど分野横断的に携わりながら課題解決に向けて企画から実装まで手がける「パノラマティクス」を結成。2023年よりグッドデザイン賞審査委員長。2023年D&AD賞デジタルデザイン部門審査部門長。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。
日時:2024年12月9日(月)19:00-20:40(受付開始予定18:45)
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ内 インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F)
登壇者(敬称略):
藤本壮介氏 藤本壮介建築設計事務所 主宰
永見靖氏 日本国際博覧会協会 企画局 持続可能性部 部長
齋藤精一氏 Panoramatiks 主宰/2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター
参加費:無料
共催:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、公益財団法人日本デザイン振興会
企画・プロデュース:齋藤精一、佐々木実、森友紀(Panoramatiks)
協力:Peatix Japan株式会社