大阪市に本社を構える甲子化学工業が、廃棄されるホタテ貝殻を活用した革新的な製品を開発した。その成果となる防災用ヘルメット「ホタメット」と、万博会場に設置されるベンチ「ホタベンチ」が注目を集めている。これらは、日本発のアップサイクル技術による新しい可能性を示すものだ。
廃棄ホタテから生まれた、アップサイクルの逸品「ホタメット」と「ホタベンチ」。
ホタテ漁が盛んな北海道猿払村では、年間約4万トンの貝殻が廃棄され、その処理が大きな課題となっていた。甲子化学工業の企画開発部長である南原徹也氏は、貝殻に含まれる炭酸カルシウムの特性に着目し、廃棄物を新たな製品へとアップサイクルする道を模索した。こうして誕生したのが、環境配慮型防災ヘルメット「ホタメット」と、デザイン性と強度を兼ね備えたベンチ「ホタベンチ」だ。
「ホタメット」は、ホタテ貝殻をパウダー状にしてプラスチックに混ぜることで、通常のヘルメットと比べて最大36%のCO2削減効果を実現。強度は33%向上し、防災用としてだけでなく自転車用としても使用可能だ。2023年の改正道路交通法施行に伴い、ヘルメット需要が増加したことで注目を集め、オンライン販売でも人気を集めている。
一方、「ホタベンチ」は、セメントとホタテ貝殻を組み合わせた新素材を使用し、万博会場に設置される予定だ。強度を高める波状デザインと、自然を感じさせるオフホワイトの色合いが特徴で、廃棄物を有効活用した持続可能なデザインの象徴として国内外から高い評価を受けている。
甲子化学工業の取り組みは、日本国内だけでなく海外からも注目を集めている。韓国やアメリカ、中国などの団体から協働の申し出があり、廃棄貝殻の活用技術が世界的な課題解決の一助となる可能性を秘めている。また、「ホタメット」の素材技術は雑貨、家電、自動車分野への応用も期待されており、さらなるアップサイクルの可能性が広がっている。
大阪・関西万博の開催に向け、甲子化学工業は「ホタベンチ」を5脚設置し、廃棄物の新たな価値を体感できる場を提供する計画だ。さらに、体験型イベントとして東京と大阪で制作工程を公開し、アップサイクルの魅力を次世代へ伝える試みも進めている。「ホタメット」と「ホタベンチ」は、ただ廃棄物課題を解決するだけでなく、新しい産業やコミュニティを生む可能性を秘めている。