金沢工業大学は、ドイツのFraunhofer IGCVと協力し、炭素繊維複合材料のリサイクル技術に関する国際共同研究拠点「FIP-MIRAI@ICC」を新設した。拠点のオープニングセレモニーは2025年6月5日、金沢工業大学やつかほリサーチキャンパス内にある革新複合材料研究開発センター(ICC)で開催された。脱炭素社会の実現を見据えた最先端の循環型技術開発が本格的に始動する。

リサイクル炭素繊維複合材料の研究開発・技術移転・事業化に向けたUnder-one-roofの研究開発拠点である「FIP-MIRAI@ICC」が立ち上がった革新複合材料研究開発センター(ICC)
(金沢工業大学やつかほリサーチキャンパス内)

欧州と日本の技術が結集 “再資源化”を起点とする産業連携が始動。

地球環境問題の解決に向け、素材の循環利用が強く求められる中、炭素繊維複合材料のリサイクルは世界的な課題となっている。高強度・軽量という特性から航空・自動車産業での需要が高まる一方、製品寿命後の廃棄物処理や再利用の難しさが持続可能性の壁として立ちはだかっていた。
この課題に対し、金沢工業大学とFraunhofer IGCVが共同で設立した「FIP-MIRAI@ICC」は、リサイクル炭素繊維複合材料の研究開発、技術移転、事業化を一体で行うUnder-one-roof型の拠点だ。炭素繊維の回収から再成形に至るまでの一貫した開発体制が整い、これから5年間にわたって共同研究が実施される。総事業費は200万ユーロ(約3億1700万円)で、日独両機関が折半して負担する。
Fraunhofer IGCVは、炭素繊維の回収およびマット化において優れた技術を有しており、ICCは成形プロセスおよび設備化に強みを持つ。両者の補完的な関係により、高度なリサイクル技術の確立が期待されている。
拠点には、日本と欧州の企業、大学、研究機関が参画する予定で、広範な技術と人材が集積される。炭素繊維複合材料の再資源化を通じて、製造業における新たな循環型産業モデルの創出が視野に入る。
加えて、繊維産業が集積する石川県内の企業にとっても、今回の研究拠点は炭素繊維複合材料の販路拡大と国際展開の起点となる。廃棄物として見なされてきた複合材料を、再び社会資源として活用することで、地域経済への波及効果も見込まれる。
FIP-MIRAI@ICCでは、炭素繊維を「次世代の貴重な資源」と位置づけ、その高い付加価値を活かした循環型社会の実現に挑む。素材開発の現場からグローバルな連携を広げる本拠点は、日本と欧州をつなぐ技術と人材の「ゲートウェイ」としての役割も担うことになる。

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