筑波大学と帝京大学の共同研究チームは、植物が傷を修復する際に働く細胞増殖の制御メカニズムを解明した。研究では、植物が自らの傷を癒やす際に必要な細胞分裂を抑制する遺伝子「At2-MMP」を発見。これにより、植物の自己修復能力や接ぎ木技術への応用が期待されている。

植物の細胞増殖を抑える遺伝子At2-MMPの役割

植物は、茎が切断されても自らの力で修復する優れた再生能力を持つが、その詳細なメカニズムについてはこれまで十分に解明されていなかった。特に、細胞増殖の制御に関する研究は少なく、このプロセスがどのように適切に終了するのかは謎のままだった。
今回の研究では、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、遺伝子At2-MMPが細胞分裂の抑制に重要な役割を果たしていることが明らかになった。At2-MMPが欠損した変異体では、傷口で異常な細胞増殖が進行し、修復プロセスが正常に完了しないことが確認された。一方、At2-MMPを過剰に発現させると、正常な修復が促進されることがわかった。
植物は、At2-MMPを通じて細胞分裂を制御することで、傷を効率的に修復し、正常な組織を再生させる。このメカニズムは、接ぎ木技術や農業分野における植物の自己修復能力を強化するための新たな手がかりになるため、この研究成果は接ぎ木技術の向上や、自然災害後の植物の修復支援、新たな農業技術の開発など、多岐にわたる応用が期待されている。特に、植物の傷害に対する耐性強化や、バイオマス増産における利用可能性が高い。今後、At2-MMPが標的とする分子メカニズムのさらなる解明が進むことで、植物の修復能力を飛躍的に向上させる技術が開発されるだろう。

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