株式会社モノクロームは、屋根一体型太陽光パネル「Roof–1」に新色シルバーを追加し、2025年9月3日から販売を開始した。既存のブラックに加え、光の角度で表情を変えるアルミ質感のシルバーを導入。架台の存在感を消し、屋根面そのものを発電デバイスに変える発想は、建築意匠とエネルギー性能の両立を図る設計者の要求に応える。

「Akiya-CD棟:パースイメージ」

「見せない発電」――屋根材としての一体感と、設計自由度の拡張。

太陽光発電の普及が進む一方で、住宅や小規模建築の屋根におけるデザイン上の制約は長く課題だった。「架台+パネル」という従来構成は、屋根形状や外観の一体感を損ない、意匠上の妥協を迫ってきた。「Roof–1」はこの前提を反転させる。金属屋根に特殊加工セルを組み込み、屋根そのものをモジュール化。屋根面がそのまま連続するため、視覚的なノイズが極小化される。ブラック単色で実績を重ねてきた同製品は、板金屋根と組み合わせる施工により、多様な屋根形状にも連続面として対応してきた。
今回のシルバー追加は、その設計自由度をさらに押し広げる。新色は周辺環境の反射光を拾い、陰影のグラデーションを強調する。ファサードと屋根を水平・垂直に貫く素材感をそろえたい住宅や、美術館・ギャラリー的な抑制の効いた外装において、ブラック一択では拾いきれなかった表現に踏み込める。2026年春には、武田清明設計事務所とのコラボによる搭載住宅が秋谷で完成予定とされ、海と緑が交錯する光環境のなかで、シルバーの陰影がどこまで設計価値を高めるかが試される。

Roof–1シルバー色

今後の課題は、意匠自由度の拡張と出力のトレードオフ。

機能面では、屋根材一体型ゆえの施工合理性が大きい。一般的な太陽光設置で必要な「屋根→架台→パネル」の三工程を、「屋根(=発電面)」の一工程に統合できるため、初期施工の段取りと維持管理の双方でシンプルになる。メンテナンス時も屋根部材としての交換・点検の考え方で扱えるため、ライフサイクルコストの読みやすさが増す。
一方で、意匠自由度の拡張は出力設計とのトレードオフも抱える。公表値では、同サイズのブラック(定格110W)に対し、シルバーは75Wと抑制的だ。反射や表面特性の差が効率に影響することは想像に難くない。設計者の視点では、屋根全面に敷設する面積計画や、外皮性能・蓄電の組み合わせで総発電量を補う設計最適化が前提になる。単位あたりの価格もブラック27,000円に対しシルバー35,000円と差があるため、コスト・出力・意匠のバランスをどこに置くかがプロジェクトごとの判断軸になるだろう。

美しい建築と再生可能エネルギーの融合へ。

プロダクトの背景には、住宅スケールの分散電源を「住まいの造形」と衝突させないというモノクロームの企図がある。創業者の「理想の住宅用太陽光とHEMSがない」という実務上の違和感から出発したとされる同社は、屋根一体型パネルと家庭用エネルギーマネジメント(HEMS)の両輪で、発電・蓄電・制御・意匠を束ねる設計言語を模索してきた。AWAJI EARTH MUSEUMや都市住宅の採用例が示すのは、量産住宅から小規模文化施設まで、屋根面の“連続性”を崩さずに再生可能エネルギーを内蔵するという建築的態度である。

「AWAJI EARTH MUSEUM」 設計:MuFF
「麻布の家」設計:Suppose Office Design

再生可能エネルギーの導入を「後付けの機械」に委ねる時代は、住宅の意匠が成熟するほどに限界を見せる。Roof–1のシルバーは、出力絶対値の競争ではなく、都市や風景の光を取り込みながらエネルギーを生む“建材としての発電”という文脈を明確化した。屋根を構法と設備の交差点に位置づけ直すことで、エネルギーと建築の一体化は次の段階へ進む。設計者にとっての問いは、どのプロジェクトで、どの色と面積と制御を組み合わせるか、その戦略設計に尽きるだろう。

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