東北大学大学院工学研究科の宮本浩一郎准教授と大学院生命科学研究科の上妻馨梨助教(現:京都大学大学院農学研究科)は、植物の葉の裏面に取り付け、葉色やクロロフィル量、ストレス応答を検出する小型センサを開発した。このセンサにより、クラウドを通じてどこからでも植物の健康状態を確認でき、スマート農業において植物の遠隔管理が可能になる見込みだ。
葉の裏に取り付ける小型センサで広範囲の植物モニタリングを実現
気候変動や人口増加が進む現代、農業分野では効率的な資源管理と生産性向上が求められている。このような背景から、植物の健康状態を遠隔で管理できる技術が注目されており、スマート農業の推進が急務となっている。東北大学の研究チームはこの課題に対応するため、新しい小型センサを開発した。
このセンサは植物の葉の裏面に直接取り付けることで、葉色やクロロフィル量、環境ストレスを検出することが可能だ。耐水性があり、バッテリー駆動による長期間の連続測定ができ、測定データはクラウド経由でリアルタイムに確認できる。また、このセンサは比較的低コストで作製可能であり、広範囲の植物モニタリングが実現しやすくなる。
研究チームは、約30種類の植物を使用した機能テストを実施した。その結果、小型センサでの測定結果は市販の分光器と同等の精度であることが確認された。また、光環境によるストレス応答の変化を検出する実験でも高い信頼性が示された。屋外でのテストでは、葉の色変化や枯死の過程をリアルタイムに観測でき、植物の健康状態を把握するための有効な手法として評価された。
今後は、このセンサを活用してスマート農業を一層推進すると共に、森林生態系の管理や環境研究分野への応用も期待されている。低コストかつ高精度なセンサを多地点に設置することで、農業の持続可能な発展に寄与する技術基盤の構築が見込まれている。