広島大学と岡山大学の研究チームが、約75年間不明だった植物由来のポリ(β-ピネン)の化学構造を初めて解明した。この研究成果により、植物由来材料の高性能化が期待されるだけでなく、化石燃料由来の材料を代替する新たな可能性が広がる。研究結果は2024年9月25日にアメリカ化学会の学術誌「Macromolecules」で発表された。
植物由来樹脂の高機能化が化石燃料代替の道を開く
植物由来の高分子材料は、サステナビリティと環境への配慮の観点から注目を集めているが、その性能向上や化石燃料由来材料の代替としての応用は依然として課題だった。広島大学と岡山大学の共同研究グループは、植物由来のポリ(β-ピネン)の正確な化学構造を決定し、この問題に大きな進展をもたらした。
ポリ(β-ピネン)は植物のβ-ピネンを原料とし、工業的には粘着剤や透明樹脂材料などに応用が期待されている。しかし、複雑な繰り返し構造を持つため、その正確な構造は長らく未解明だった。本研究では、広島大学が開発した触媒技術と極低温プローブNMR解析技術を組み合わせ、2種類の主要構造である1,4-シクロヘキセニル構造と1,3-シクロヘキセニル構造を明らかにした。
これにより、構造と熱物性の関係も解明され、1,4-構造の割合を高めることでポリ(β-ピネン)の耐熱性が向上することがわかった。さらに、この技術が進展すれば、化石燃料由来の炭化水素樹脂を植物由来樹脂で代替する道が開かれ、環境負荷を大幅に軽減できると期待されている。
今後、ポリ(β-ピネン)の高機能化や応用範囲の拡大が進めば、コーティング剤や透明フィルムなど幅広い分野での応用が見込まれており、持続可能な循環型社会の実現に向けた重要なステップとなるだろう。
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