
★要点
2027年国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」では、大阪・関西万博のアイルランドパビリオンとORA外食パビリオン「宴〜UTAGE〜」などの建築資材を、メインゲートやレストランとして再利用する。さらに会場全体では「GREENサーキュラー建築」、植物資源の活用、3Rと分別の徹底、食品残渣や廃プラスチック類などのリサイクルを掲げ、博覧会を“使い捨てのイベント”から“資源が巡る社会実験”へ変えようとしている。
★背景
大規模イベントは、仮設建築、展示資材、飲食容器、装飾、植栽など大量の資源を短期間に使う。その一方で、閉幕後に多くの資材が解体・廃棄されてきた。気候危機、建設廃棄物の削減、資源価格の上昇、循環経済への移行が同時に進むなか、博覧会は「未来を見せる場」から「未来の資源循環を実装する場」へ変わりつつある。大阪から横浜へ資材を受け継ぐ今回の取り組みは、博覧会のレガシーを記念や記録ではなく、次に使える社会資産として残す試みだ。
博覧会は、終わったあとに何を残すのか。華やかな展示、来場者の記憶、地域のにぎわい。それだけでは足りない時代に入った。2027年に横浜・上瀬谷で開かれる国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」は、大阪・関西万博の建築資材を受け継ぎ、メインゲートやレストランへ再構築する。壊して捨てるのではなく、解いて使い直す。仮設建築を一度限りの消耗品ではなく、次の風景をつくる資源として扱う試みである。
大阪から横浜へ。パビリオンが“転生”する
大阪・関西万博の会場で使われた建築資材が、横浜のGREEN×EXPO 2027で新しい役割を持つ。
TSP太陽は、大阪・関西万博のアイルランドパビリオンとORA外食パビリオン「宴〜UTAGE〜」の建築資材を継承し、GREEN×EXPO 2027のメインゲートとレストランへ再構築する。アイルランドパビリオンの外装に使われた木材は、メインゲートへ。ORA外食パビリオンで使われた構造材は、レストラン空間へ。展示の記憶が、次の来場者を迎える建築になる。
象徴的なのは、メインゲートだ。アイルランドパビリオンで使われた米松のルーバー状木材約1000本を、極力原型を生かして再利用する。木材と鉄骨部材を組み合わせた全長約92メートルのゲートは、単なる入口ではない。大阪の会場で一度使われた素材が、横浜で再び人を迎える。建築資材が、開催地を越えて旅をする。
レストランにも、同じ思想がある。外壁の一部にはアイルランドパビリオンの木材を使い、建物全体はORA外食パビリオン「宴〜UTAGE〜」と同じ構造形式で設計する。2階天井部分に使われた「TMトラス」も再利用し、平屋建てで柱のない大空間をつくる。資材の再利用は、我慢のデザインではない。むしろ、素材の履歴を生かして空間に物語を与える設計である。

GREENサーキュラー建築——仮設を“使い捨て”にしない
GREEN×EXPO 2027の資源循環で重要なのは、個別の再利用事例だけではない。会場全体の思想として「GREENサーキュラー建築」を掲げている点だ。
2027年国際園芸博覧会協会が策定した「資源循環の考え方」では、循環経済の観点を踏まえ、「GREENサーキュラー建築」や「GX House(リユース型建築)」を推進するとしている。仮設建築物を、会期中だけ使って終わる建物として扱わない。調達、建設、運用、撤去、再利用までを一つの流れとして設計する発想である。
従来のイベント建築は、短期間で建て、短期間で壊すことを前提にしてきた。スピードと効率が優先され、閉幕後の行き先は後回しになりがちだった。だが、建設資材には採掘、製造、輸送、施工に伴う環境負荷がある。使われる期間が短ければ短いほど、その負荷は重く見える。
だからこそ、GREENサーキュラー建築は、建物の“寿命”を会期に閉じ込めない。日常のメンテナンスや将来の改修をしやすくし、後利用をあらかじめ見込む。国産木材の活用、リース品の採用、リサイクル可能な素材の利用、モジュール化された建築。こうした手法を組み合わせ、建築資材を廃棄物ではなく、次に使える社会資産として扱う。
これは「仮設」の意味を変える試みでもある。仮設とは、短命でよい建物ではない。変化に応じて移り、組み替わり、別の場所で役割を持つ建築だ。GREEN×EXPO 2027は、その考え方を博覧会の現場で見せようとしている。
植物資源を使いきる。園芸博ならではの循環
GREEN×EXPO 2027は国際園芸博覧会である。だからこそ、資源循環の中心には植物がある。
「資源循環の考え方」では、再生可能な植物資源を最大限に活用し、プラスチックの使用を最小化する方針が示されている。木材、紙、植物油、バイオマス。これらは単なる代替素材ではない。園芸博のテーマと深く結びつく、植物由来の資源である。
建築でも、国産木材を構造材や仕上げ材、ファニチャー、場合によってはエネルギーとして使いきることが想定されている。木を使うことは、森を減らすことではない。適切な森林管理と結びつけば、伐って使い、植えて育てる循環をつくる。建築が森林資源の循環とつながる。
園芸博らしいのは、会期中に使われる植物そのものの扱いだ。展示や修景に使われた植物は、閉幕後に来場者へ花苗として配布したり、公共施設で再利用したり、堆肥化したりすることが検討されている。植物を飾って終わりにしない。育て、見せ、渡し、土に戻す。
ここに、園芸博の本質がある。植物は消費材ではなく、循環の主体である。花や緑を展示するだけなら、従来型のイベントでもできる。GREEN×EXPO 2027が問われるのは、植物と人間の関係をどう更新するかだ。見る植物から、使い、育て、戻す植物へ。そこに、未来の園芸文化の方向性が見える。
ごみを減らすだけではない。「36分別と9分別」が示す運営の設計
資源循環は、建築だけで完結しない。会期中の飲食、物販、来場者行動、出展者の運営も大きな要素になる。
GREEN×EXPO 2027の「資源循環の考え方」では、開催中の廃棄物排出量について、可燃ごみ、紙類、食品残渣の割合が大きく、これら3項目で約64%を占めるとされている。つまり、資源循環の成否は、会場で何を食べ、何を買い、どう捨てるかにも左右される。
同方針では、古紙、食品、廃プラスチック類、ペットボトル、びん、缶、廃食用油のリサイクル率目標を100%、廃棄物全体のリサイクル率目標を65%に設定している。さらに、協会・出展者向けには36分別程度、来場者向けには9分別程度を想定し、リサイクルステーションの設置や分別啓発を進める。
分別は地味だ。メインゲートのように写真映えするわけではない。だが、資源循環の現場は、むしろここにある。来場者がカップをどこへ入れるか。出展者が紙類をどう分けるか。食品残渣を堆肥化や再資源化につなげられるか。こうした運営の積み重ねが、博覧会の環境性能を決める。
サーキュラーエコノミーは、理念だけでは回らない。分別、回収、保管、運搬、再資源化のルートが必要だ。GREEN×EXPO 2027の挑戦は、華やかな会場演出の裏側で、どれだけ精密な資源の動線を設計できるかにかかっている。
“レガシー”を記念品で終わらせない
博覧会のレガシーとは何か。建物か。記録か。地域のにぎわいか。GREEN×EXPO 2027が示すのは、レガシーを「残すもの」ではなく「使い続けるもの」として捉える考え方だ。
大阪・関西万博のパビリオン資材を横浜で再利用することは、記念品的な継承ではない。素材を次の機能へ渡す行為である。アイルランドパビリオンの木材は、横浜でメインゲートになる。ORA外食パビリオンの構造材は、レストランの空間を支える。過去のイベントの断片が、次のイベントのインフラになる。
この発想は、都市にも応用できる。壊して更地にするのではなく、部材を外し、転用し、再構成する。建物単位ではなく、部材単位で寿命を延ばす。資材に履歴を持たせ、次の用途を見込んで設計する。建築を“物”ではなく、“循環する素材の一時的なかたち”として見る。
大阪・関西万博とGREEN×EXPO 2027の接続は、その実験である。一つの博覧会で使ったものを、別の博覧会へ渡す。これは単なるコスト削減ではない。社会が資源をどう扱うかを可視化するメッセージだ。

万博型サーキュラーを都市の標準へ
GREEN×EXPO 2027の資源循環を、一過性の取り組みに終わらせてはいけない。むしろ重要なのは、この考え方を博覧会の外へ持ち出すことだ。
たとえば、建築資材のトレーサビリティ。どの部材が、どこで使われ、どの状態で解体され、次にどこへ渡るのか。資材の履歴を管理できれば、再利用は偶然ではなく計画になる。デジタル台帳やマテリアルパスポートのような仕組みが必要になるだろう。
また、仮設建築の標準化も重要だ。イベント、展示会、仮店舗、災害時施設、公共空間の暫定利用など、短期間使う建築は多い。そこでリユース型、モジュール型、解体しやすい設計を標準にすれば、資源循環の効果は大きい。
あるいは、運営と来場者行動のデザインも活用できる。リサイクル率を上げるには、来場者の善意だけに頼れない。分かりやすい表示、捨てやすい配置、スタッフやボランティアによる案内、出展者のルール徹底。仕組みとして分別しやすい会場をつくる必要がある。
そして、植物資源の地域循環。展示後の花苗や植栽を地域へ渡す、堆肥化する、公共施設で再利用する。園芸博だからこそ、植物を地域の循環に戻す仕組みをレガシーにできる。
博覧会は未来を展示する場所である。だが、これからの博覧会は未来を展示するだけでは足りない。未来の運営方法そのものを実装する必要がある。
GREEN×EXPO 2027の資源循環は、メインゲートやレストランの美しい再利用だけで評価されるものではない。建てる前から解くことを考え、使う前から次の用途を考え、捨てる前から資源化の道を用意する。その思想を、どこまで会場全体に通せるか。
大阪から横浜へ。パビリオンからゲートへ。展示から社会資産へ。
資源は、使い終わった瞬間にごみになるのではない。次の設計があれば、もう一度、風景をつくる。GREEN×EXPO 2027は、その当たり前を社会に見せる場になる。
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