東北大学の研究グループが、日本列島下の地表から核-マントル境界(深さ2889km)までの全マントル3次元構造を詳細に明らかにした。新たに開発した手法により、全マントルの流れ場の高精度推定にも成功。千島弧で発生する巨大噴火の発生メカニズムが、マントル深部からの熱い上昇流と沈み込んだプレートの相互作用により引き起こされる可能性があることが示唆された。

全マントル構造の高精度推定に成功、深部までの地震・火山活動の理解が進展。
日本列島とその周辺地域では、複雑なプレート沈み込み帯が形成されており、地震や火山噴火が頻繁に発生する。これまでの地下構造研究は、主に上部マントル(深さ660km以浅)に焦点を当てたものが多く、下部マントル(深さ660~2889km)も含めた全マントル構造の詳細な解析は行われていなかった。
この課題に対し、東北大学大学院理学研究科 附属地震・噴火予知研究観測センターの研究チームが、最先端の地下構造推定手法を用いて、日本列島下の全マントル3次元構造を初めて高精度で推定することに成功した。この研究により、日本列島下に沈み込んだ太平洋プレートが複数のブロックに分かれ、間欠的に下部マントルに沈み込んでいることが明らかになった。
千島弧の巨大噴火の新たなメカニズム、マントル深部からのエネルギー供給。
千島弧で発生する巨大噴火の発生要因について、新たな知見が得られた。研究グループは、マントルの流れを可視化できる新手法を開発し、全マントルの流れ場を世界で初めて高精度に推定。その結果、マントル深部からの熱い上昇流が沈み込んだプレートの穴を通り、島弧マグマと混合することで、巨大噴火が引き起こされる可能性が示唆された。この発見は、火山噴火の発生メカニズムの解明に寄与し、今後の防災対策や噴火予測の精度向上に貢献することが期待される。
この研究によって、日本列島下に沈み込む太平洋プレートが、単一の塊ではなく複数のブロックに分かれ、間欠的に下部マントルへ沈み込んでいることが判明した。この成果により、地震発生のメカニズムやプレート運動の理解が深まり、長期的な地震予測や火山噴火のリスク評価に役立つ可能性がある。今後、この手法をさらに発展させることで、より精密な地下構造の解明が期待される。
科学的知見の蓄積が防災へ貢献。
今回の研究成果は、3月1日付で米国地球物理学連合(AGU)の科学誌『Journal of Geophysical Research: Solid Earth』にオンライン掲載された。
これまで未知の領域であった全マントルの構造や流れ場の可視化は、地震や火山噴火の発生要因を解明する上で極めて重要な進展となる。この研究を基に、より詳細な地下構造の解析が進めば、地震や火山噴火のリスク評価精度が向上し、防災・減災の取り組みに大きく貢献するだろう。