大成建設株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:相川善郎)は、高速走行中の電気自動車(EV)へ無線で電力供給が可能な次世代道路「T-iPower Road」を開発し、国内で初めて時速60kmでの連続無線給電に成功したと発表した。この実証は福島県田村市にある同社グループの次世代技術実証センターで行われ、最大10kWの出力が確認された。同技術により、EVの長距離・連続走行が現実のものとなり、将来の高速道路への本格的な適用に大きな期待が寄せられている。

EV普及の鍵となる「走行中給電」と次世代道路「T-iPower Road」。高速道路への本格適用へ前進。

運輸部門の年間CO2排出量が国内総排出量の約18%を占める中、その約9割が自動車に起因するとされ、EVの普及は脱炭素社会実現に向けた重要な課題になっている。従来では充電インフラの不足や航続距離への不安がEV普及の障壁となっていたが、これを解決する革新的な技術として期待されているのが「走行中給電」だ。これまでの国内実証では時速20km程度での給電が限界だったが、大成建設が開発した「T-iPower Road」の成功により、高速道路での「走行中給電」実用化が視野に入ってきた。
大成建設が2012年から開発を進めてきた「T-iPower Road」は、道路に埋設した電極から走行中の車両へ給電する「電界結合方式」を採用。今回の実証実験では、テストコースの直線20m区間に無線給電道路を構築し、時速60kmで走行する車両に対して最大10kWの送電を行い、車両側で6~7kWの電力を連続して受電することに成功した。その際の伝送効率は平均66%、最大で71%に達した。
この技術は給電性能だけでなく施工性にも優れており、従来の大型機械を用いた工法で建設やメンテナンスが可能で、送電システムは舗装の表層から100mm以上の深さに埋設されるため、大型車両が通行する高速道路と同等の耐久性も確保されている。今後、大成建設は中型・商用車など様々なEVへの対応を目指し、高速道路への本格適用に向けた技術開発をさらに進める方針。この技術の発展は、EVのバッテリー小型化や航続距離の問題を解決し、誰もが安全で安心して移動できる持続可能な交通環境の構築と、脱炭素社会の実現に大きく貢献することが期待されている。

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